八王子見て歩記/機・資料館

八王子「機・資料館」

線路沿いの気になる建物
中央線八王子駅の近くに一風変わった建物があります。
家具の大正堂の反対側の線路沿い、緑の芝生の奥に茶色い建物。
創業73年を越える成和株式会社様の「機・資料館」(はた・しりょうかん)です。
そこは、機(はた)を中心とした展示をしている全国的にも珍しい施設でした。
主にお得意先の研修・見学に利用されているそうですが、
お願いして特別に中を見せていただきました。
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機・資料館の生い立ち
当社の創業は昭和10年。今日、数多くのメーカーが海外に生産拠点を置いていますが、当社はMade in Japanの価値を追求し、国内向けに製品を生産・出荷しています。地元八王子の優秀な協力先と一緒に、高品質な製品づくりと共同研究開発に取り組んでいます。

以前、当社の工場は浅川堤防沿いにありましたが、昭和60年にこちらへ移転しました。その際、設備の入れ替えで不要になった古い織機を処分することになり、ただそのまま捨てるのはもったいないと考えました。
「こういう仕事をやってる以上、後世に何かを残すべき義務があるんじゃないか」。
「温故知新」という私どもの考えで資料館として保存することに決まりました。機などの展示物はこの時から収集を開始しています。
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資料館が完成したのは平成7年(1996年)、創業60年の節目の年です。それまでは収集した機や資料を社内のあちこちに分けて保管していました。会議室、倉庫、工場の片隅までそれこそ溢れるばかりの量です。
収集先は、北は東北地方、南は沖縄まで広範囲に渡ります。変わったところでは中国の古い機織機も収蔵しています。残念なことに地元八王子の機は何点も見つかりませんでした。八王子空襲でそのほとんどが焼けてしまったのではないかと私どもは想像しています。

館内の様子
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蚕箔(さんはく)
この上に桑の葉を敷いて蚕を育てていました。蚕が幼い時は目の細かい網、大きくなったら目の粗い網を使いました。地域ごとに丸いもの、四角いものと、色々かたちが異なっています。
八王子では「お蚕さま」と呼び大切に育てていました。年に4回、春・夏・秋・晩秋の年4回飼育をしていましたが、晩晩秋まで飼育を行う地域もありました。1か月くらいで幼虫から繭になる間の手間が大変で、農家は桑の葉を切らさないよう夜中にも世話をしていました。


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百回し揚器(ひゃくまわし あげき)
糸枠から同じ長さの糸を巻き取る器具です。取っ手をグルグル回すと一定回数で棒が金属製のベルをチーンとたたく、その作業を繰り返すことで同じ長さの糸をいくつも巻き取ることができました。


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八丁撚糸機(はっちょう ねんしき)
生糸は、撚糸(ねんし)工程で撚(よ)り合わされて強い絹糸になります。この機械に紐は何本ありますか?と見学者の方によくお聞きするんです。答えはたったの1本。一見、数本の紐がかかっているように見えますが、実は1本の紐を巡らせることで、それぞれの管が同じ回転をするように工夫されています。


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濡れ男巻き(ぬれ おまき)
男巻きとは、経糸(たていと)を巻き取っておく、織機のシリンダー状の部品です。男巻きに巻き取る際、糸が乱れないように薄く糊付けをしますが、固まってしまわないように巻き取る間隔を広く取り、乾燥させながらゆっくり巻き取ります。


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紋紙穿孔機(もんし せんこうき)
ジャカード織機に使う紋紙を製作する機械です。方眼紙に書かれた図案=意匠紙を元に紋紙に穴を開けて情報を保存します。昭和時代中期にあったコンピューターのパンチカードと原理的によく似ています。


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杼(ひ)
「シャトル」とも呼ばれ、機織りに不可欠な道具。織物の経糸(たていと)の問に緯糸(よこいと)を通す際に使用します。実際に八王子で使用されていた絹用の杼も収蔵しています。


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機織り機(はたおりき)
当館では、実際に使っていた状況を再現するため機織り機に全部糸を繋げています。こちらは、経糸(たていと)を通した綜絖(そうこう)を弓の反発力で上下させる仕組みを使っています。文化財的な価値がある珍しい1台です。


2004年に開催された「シルク・サミット2004 in 八王子」では見学コースの1つになり、全国から参加された多くの方に入場していただきました。
残念ながら、当資料館は入場料をいただく一般の博物館ではありません。貴重な資料を後世に残したいという考えから設立した私設の収蔵館でして、大変申し訳ありませんが、一般非公開とさせていただいております。
※編集部注:Web上で機・資料館の展示物を見ることができます。

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ネクタイの作り方
成和株式会社様は、ネックウェア企画製造とテキスタイル企画製造をなさっている会社様です。資料館のドア取手はネクタイのカタチをしたしゃれたもの。工場内も見学させていただき、ネクタイがどう作られるのかをお教えいただきました。
ネクタイの織機には「2幅(ふたはば)」や「3幅(みはば)」という種類があります。「幅」とは、ネクタイ用生地の横幅1つ分を指し、1幅は50cm。、生地を2つ取れるのが「2幅(ふたはば)」、3つが「3幅(みはば)」です。ネクタイは斜めに生地取りします。キュッと締めた時に伸び縮みを発揮させるためだそうです。

たとえば、電車で隣の人が同じネクタイを締めていたらお互いバツが悪いですよね。そうならないためにも成和様では多品種少量生産に特化されたそうです。この時大変なのが糸のセッティング。織機はその機構上、経糸(たていと)の交換に4時間くらいかかります。経糸の交換頻度をなるべく下げるため、使わない色の糸をかけた機械もそのまま待機させています。そのため24台もの織機をラインに用意していらっしゃいます。見学させていただいた時も織機が何台か休んでいました。

経度と緯度の関係にあるのが、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)です。経糸(たていと)が色合いとともに風合いを出し、緯糸(よこいと)は模様を出す働きをするそうです。経糸の色数が10〜15種類ほどに対し、緯糸は350種類以上も用意してあるのだとか。

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どこかビジネス哲学にも通じるものがあるお話しだと思いませんか?
経糸(たていと)=地味な基本を守ることをベースに、緯糸(よこいと)=発想の飛躍も怠らない。スタンドプレイだけでは企業は成り立ちません。また、色々な人材がいてこそ、企業も発展していくのだと思います。人間"模様"とも言いますしね。

取材協力:成和株式会社 機・資料館
by u-t-r | 2008-12-31 08:24 | 八王子見て歩記

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「直接ご本人に会ってお話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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