八王子見て歩記/御陵とケヤキ並木(初夏)

武蔵御陵・多摩御陵と参道のケヤキ並木(初夏)
〜八王子市長房町
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高尾駅北口から甲州街道のイチョウ並木を東にたどると、ほどなく多摩御陵入口の交差点に着きます。左折すれば御陵参道で、ここから御陵の前までケヤキ並木が続きます。

多摩御陵

天皇のお墓のことを御陵と呼びます。正式には陵(みささぎ)ですね。多摩御陵が造られたのは、大正15年(1926年)に大正天皇が崩御したことから。当時の東京府南多摩郡横山村、浅川村、元八王子村の3つにわたる地域に御陵を造ることが決められました。名称は武蔵陵墓地といいます。大正天皇陵は、この武蔵陵墓地の一角である現在の長房町にあたる横山村大字下長房字竜ヶ谷戸に造られました。大正天皇陵の名称は多摩陵(たまのみささぎ)、面積は467,000平方m、形式は上円下方墳です。
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南浅川橋

現在南浅川橋のある場所には当時橋はありませんでしたが、御陵ができることになり、昭和2年(1927年)に急いで架けられました。最初は木製でしたが、昭和11年(1936年)には鉄筋コンクリートに造り替えられました。長さは53.3m、幅は20mあります。写真は高尾駅寄りにある橋歴の説明プレート。(クリックで拡大)
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並木と御陵線

昭和4年(1929年)に多摩御陵ができたのを記念して、甲州街道が改修されました。この時、追分から高尾駅までの道に沿って4.2kmに約760本のイチョウが植えられてイチョウ並木になりました。御陵参道のケヤキは、大正天皇が多摩御陵に移された後に、多摩陵墓地への参道に160本植えられました。御陵のケヤキ並木は、東海道の松並木、日光の杉並木と並んで、日本の三大並木と称されることもあります。

多摩御陵ができると、全国からたくさんの人が参拝に訪れるようになります。完成直後は御陵前に着く鉄道はありませんでしたが、昭和6年(1931年)になって、当時の京王電軌(現:京王電鉄)が北野、片倉、山田、武蔵横山、御陵前の約6.4kmを結ぶ御陵線を開通させました。参拝者にとって便利な路線でしたが、その後、他の鉄道会社との競合や戦争で、昭和20年(1945年)に廃止されてしまいます。御陵前駅も八王子空襲で焼けてなくなってしまいました。下の写真は京王御陵線武蔵横山駅跡です、今は散田架道橋となって、中央線と立体交差になっています、昔はここを京王線がオーバークロスしていました。(クリックで拡大)
※写真提供:京王資料館様
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4基の御陵

武蔵陵墓地には大正天皇の御陵のほかに3基の御陵があります。一つ目は、昭和26年(1951年)年5月17日に67歳で亡くなった大正天皇の后・貞明皇后の多摩東陵(たまのひがしのみささぎ)、二つ目は、昭和64年(1989年)1月7日に87歳で亡くなった昭和天皇の武蔵野陵(むさしののみささぎ)、三つ目は、平成12年(2000年)6月16日に97歳で亡くなった昭和天皇の后・香淳皇后の武蔵野東陵(むさしののひがしのみささぎ)です。参拝されると分かりますが、天皇の御陵と皇后の御陵は仲良く隣り合わせ。二人の皇后御陵は天皇陵より鳥居の高さがちょっと低くなっているのが可愛らしいです。

静かな参道

昭和4年(1929年)に植えられた参道のケヤキもすでに100年を過ぎています。表参道のケヤキ並木も同様に古いのですが、東京空襲でほとんどが焼けてしまい、現在の163本中わずか11本だけが明治神宮ができた大正時代に植えられたもの。ほかは昭和25年(1950年)頃に再植樹したものです。御陵のケヤキ並木は、樹齢からいっても、整備された景観の美しさからいっても、日本有数のケヤキ並木だと思います。(クリックで拡大)
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参道の突き当たりが御陵入口です。平日は訪れる人も少なく、静かで落ち着いた場所です。御陵の近くは駐停車禁止です。停めてたら、すぐにお巡りさんがやってきて注意されますよ。(クリックで拡大)
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先ほどはケヤキ並木を撮るため車道側のポール内を歩きましたが、歩道はこんな感じです。植え込みで車道と区切り、間を横切る横断歩道が少ないのは警備上の都合かもしれません。この日も黒塗りの公用車が入場していて、私服警官が警護していました。(クリックで拡大)
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ケヤキは樹齢100年を超えると、こんなにも太く立派になります。台風の後などは、折れた枝を処理する業者さんが大わらわになります。枝まで太いんです。(クリックで拡大)
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参道沿いの大木

南浅川橋を渡ってすぐの民家前に大きな木がありました。参道のケヤキ並木ではないので、他の樹種でしょう。対になった全縁の楕円形の葉。たぶんこれはハリエンジュだと思います。樹齢もおそらく参道のケヤキと同じか、それ以上。100年は超えているでしょう。
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長く生きてきた樹は、独特の迫力と生命力を感じさせます。神社が御神木として大切に思う気持ちがよく分かります。(クリックで拡大)
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歴史上の実在した人物の形跡に触れるって滅多にないことだと思います。今まで何回か御陵に参拝させていただきましたが、ついこの間までテレビで見ていた方がここに眠っていらっしゃるんだなぁと感慨を持ってお参りしました。


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全国に外出自粛令が出た2か月間。御陵はどうなっていたのでしょうか。御陵入口の交番で高尾警察署のお巡りさんにお聞きしたら、その間もいつも通り公開されていたそうです。開門は午前9時、閉門は午後4時です。午後3時半までご入場くださいとのことでした。
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京王御陵線武蔵横山駅跡写真提供:京王資料館

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by u-t-r | 2020-06-30 16:00 | 八王子見て歩記

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「現地で直接お話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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