花と山野草/多摩森林科学園の春-1

多摩森林科学園の春(3〜4月)
第1話:足元を見れば山野草の花たち
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3月半ばの高尾梅郷 梅まつりからはじまる八王子の春。3月末ともなると多摩森林科学園「サクラ保存林」の桜が咲きはじめます。まず早咲きの川津桜、次に一重桜、最後に八重桜の順です。まるで入道雲のように重なりあって咲く桜雲の足元には、春の山野草たちも花を開きはじめていました。種類が多かったので2話にしました。

森林科学園バス停近く

早春に路傍や畑の畦道などで花を咲かせるオオイヌノフグリ。地面に這いつくばるように咲く可憐な小さな薄紫色の花です。どこにでも咲いていそうな野草ですが、近年めっきり少なくなってしまいました。環境省のレッドデータブックでは「大部分の個体群で個体数が大幅に減少している」として、絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)に指定されています。花言葉は「信頼」「神聖」「清らか」「忠実」。可憐です。(クリックで拡大)
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ピンク色の小さな花はカラスノエンドウ(烏野豌豆)。原産地はオリエントから地中海にかけての地方で、古代の麦作農耕の開始期にはエンドウなどと同様に栽培されて作物として利用されていました。今日では雑草とみなされていますが、若芽や若い豆果は食べられますし、熟した豆も炒って食用にできます。花言葉は「小さな恋人たち」「喜びの訪れ」「未来の幸せ」。いじましい!(クリックで拡大)
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森林科学園入園口

フリルのついたスカートを履いてるようなヒメオドリコソウ(姫踊り子草)。ヨーロッパ原産で、日本では明治時代中期に帰化しました。大変繁殖力が強いので、在来種を脅かす侵入生物とされていますが、他の花が少ない時期にはミツバチにとっては重要な蜜の供給源となります。花言葉は「快活」「陽気」「愛嬌」「春の幸せ」「陽気な娘」「 隠れた恋」。フラメンコのよう。(クリックで拡大)
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桜の時期の多摩森林科学園ではスミレがいっせいに咲きます。スミレの花期は、3月下旬から5月くらいまで。桜の花と一緒です。白やピンクの桜花が咲き誇っている頃、みんなが頭上の桜に見とれている間に、実は足元でひっそりと花を咲かせているのです。

入園口の植え込みにもスミレが2種。白っぽい方の花はタチツボスミレ(立坪菫)。タチツボスミレは日本を代表するスミレのひとつで、高さ5〜20cm。開花期は4月〜6月のスミレ科の多年草です。北海道から沖縄までの日本全土に分布しており、古来より日本人にはなじみの深い植物でした。花言葉は「慎ましい幸福」。なんて控えめなの。(クリックで拡大)
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もうひとつは紫濃いめのスミレ(菫)。スミレは可憐な姿とは裏腹に、実はとっても強健な植物です。街なかの歩道の脇、ガードレールの下、道路のアスファルトの裂けめなど、身近な様々な場所で見つけることができます。こんなに可愛いのに丈夫、天は二物を与えたのか。(クリックで拡大)
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第2樹木園の山野草たち

森の科学館を過ぎると第2樹木園に入ります。ここから森の管理室までの間は山野草がとても多い場所。足元をよく見れば色々な花が咲いていました。一番手は花ではないけれど、真っ赤な実と緑の葉のコントラストが鮮やかなアオキ(青木)です。花言葉は「初志貫徹」「変わらぬ愛」「若く美しく」「永遠の愛」。永遠の青春って感じ。(クリックで拡大)
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緑色の葉の間から顔をのぞかせるイチリンソウ(一輪草)。名の由来は花茎の先に花を一輪咲かせることから。はるか遠い地上を見つめていた星が、眠くなって落ちてきて白い花になったという素敵な伝説もあります。原産地は宮城県以南の本州、四国、九州で、花期は4〜5月です。心源院様のニリンソウ(二輪草)によく似ていますが、そちらは茎に花が二輪ずつ付いていました。花言葉は「追憶」「深い思い」「久遠の美」。ただ一途に思う乙女心かな。(クリックで拡大)
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足元に咲いていたとっても小さな白い花はセントウソウ(仙洞草)。花の直径が2〜3mmのためマクロレンズで撮らなければ花の形すら写りません。この種しか含まれないセントウソウ属で、日本固有の単型属です。和名の由来はどうもはっきりしません。江戸時代にはこの名があったようですが、果たして本種を指した名前であるかは確認されていないそうです。花言葉は「繊細な美」。繊細すぎますっ!(クリックで拡大)
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黄色い花はキンポウゲ科のウマノアシガタ(馬の足形)。すみません。そっぽ向いちゃってます。林縁、路傍の明るいところを好む多年草で、原産地は日本・朝鮮半島、台湾、中国。開花時期は4月〜6月です。直立する茎や葉柄には長い毛が多く、花は春に咲き、黄色い花弁には強い光沢があります。果実は金平糖のような形になり、熟しても緑色です。中国では薬用に用いられますが有毒です。素手で触ってはいけません。花言葉は「栄誉」「栄光」「子どもらしさ」「無邪気」「中傷」「楽しみ到来」「到来する幸福」「富」「幸福」「上機嫌」「美しい人格」。多重人格かな。(クリックで拡大)
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5枚の花弁の先が尖った白い花はクサイチゴ(草莓)。原産地は日本。
背丈が20〜60cmと低く草の仲間のように見えるためクサイチゴと呼ばれていますが、実際は木の仲間です。果実は食用となり、甘酸っぱい味がするそう。現在、八百屋さんの店頭などで売られているイチゴは、新大陸発見後に、北米や南米の野生種がヨーロッパにもたらされ品種改良されたものです。それ以前はこうした野生のイチゴを食べていたんでしょうね。花言葉は「幸福な家庭」「尊重と愛情」「誘惑」「甘い香り」「恋愛成就」。誘惑以外は家庭円満♪(クリックで拡大)
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クサイチゴの花の形に似た黄色い花は、子どものころ食べられるかどうか友だち同士で大論争になったヘビイチゴ(蛇苺)。おばあちゃんに聞いたら「ヘビが毒を蓄える実だから食べちゃだめ!」と言われましたっけ。実際に食べてみた方の話しでは無味無酸味で味気なかったとのこと。食べなくてよかったー。
開花時期は4月〜6月。花言葉は「可憐」「小悪魔のような魅力」。見た目は美味しそうですもん。(クリックで拡大)
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菊によく似た葉と薄紫色の花弁。キンポウゲ科のセリバヒエンソウ(芹葉飛燕草)です。こう見えて帰化植物、しかも有毒です。原産地は長江以南の各省からベトナムなど、東アジア南部で、関東地方には少し日陰気味の草地や林縁に生えています。名前の由来はツバメが飛んでるような形の花から。花言葉は「陽気」「華やかな雰囲気の」。(クリックで拡大)
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スミレに似た紫色の花、よく見ると花の形や咲き方が違います。この花はシソ科のキランソウ(紫藍草)。
原産地は日本と中国で花期は3〜5月。別名:地獄の釜の蓋。すごい名前ですが、お彼岸の頃に茎や葉がべったりと地を覆うさまを誇張して名づけられました。こう見えて薬草です。花言葉は「あなたを待っています」「追憶の日々」「健康をあなたに」。演歌の世界。。(クリックで拡大)
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第2樹木園のスミレたち

スミレの仲間らしくない葉の形をしていますが、淡い紅色の花はエイザンスミレ(叡山菫)。本州(青森県)、四国、九州(霧島山)まで分布し主に太平洋側に多い植物です。日影や日当たりの良い低山の斜面や崩壊地のような急斜面に生育します。花期は4月中旬〜5月中旬頃。花言葉は「茶目っ気 」。私のことスミレと思わなかったでしょ?と言ってきそう。(クリックで拡大)
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ここ八王子で白いスミレといえば、タカオスミレ(高尾菫)が有名です。高尾山で採取・標本された日本固有種で、分かりやすい特徴は白い花と焦げ茶色の葉。数年に渡って撮る機会をうかがっているのですが、今のところ全部空振りです。今回は同じように植物を撮っていた方に在処を教えていただきました。葉だけですがどうぞ。場所は憶えたので来年こそ!花言葉は「小さな幸せ」。なかなかやって来ない部門の代表選手。(クリックで拡大)
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入園口にあったのと同じタチツボスミレ(立坪菫)。こちらの方が元気いいです。(クリックで拡大)
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彼岸通り

園内あちこちで見かけたのはゼンマイ科の多年生シダ植物ゼンマイ(薇)。分布は日本およびシベリア、中国大陸からヒマラヤにかけて、4〜6月の平地から山地にかけて自生します。たんぱく質やカロテン、ビタミンB群などを含み、山菜の王者として珍重されます。名前の由来は、芽が出てきたときの様子が銭が回転しているように見えるところから「銭舞(ぜにまい)」「銭巻き」と呼ばれ、それがしだいに「ぜんまい(薇)」となりました。時計のねじを巻く「ゼンマイ(発条)」もこの植物名から。花言葉は「円熟した優美」「子孫の守護」「夢想」「夢」「秘めたる若さ」。女性が喜びそう。(クリックで拡大)
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柳沢林道

大きさ1cmほどの可愛らしい薄黄色の花はマンサク(万作)の仲間、ヒュウガミズキ(日向水木)です。日向と名前に入っていますが、宮崎県には自生しておらず、石川県〜兵庫県の日本海側、高知県、宮崎県、台湾に分布する珍しい花です。たったひとつの花言葉は「思いやり」。儚げなこの花の姿は、見ている者を優しい気持ちにしてくれます。(クリックで拡大)
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ちょっと恐ろしげな名前の花はマムシグサ(蝮草)。北海道から九州にかけてと朝鮮半島や中国東北部に分布する里芋(さといも)科の植物です。和名の由来は、茎の表面の紫褐色の斑点が、マムシ(蝮)の銭形模様を連想させるところから。柳沢林道の48番標識にかけての上り坂で見つけました。開花時期は4月〜6月頃です。花言葉は「壮大」。意外や意外。(クリックで拡大)
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後ろから見るとこんな感じ。(クリックで拡大)
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葉がモミジに似ているモミジイチゴ(紅葉苺)。黄色い実をつけるところからキイチゴ(黄苺)の別名があります。本州中部以東の山野に自生し、よく見かけるキイチゴです。花言葉は「嫉妬」「後悔」「羨望」。こんなに可愛い花なのに。(クリックで拡大)
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第2話ではサクラ保存林の中で見つけた山野草をご紹介します。

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山野草を見て楽しむには、名前を知ってると知らないで大違いです。森の科学館1階で「園内のみどころ」として、色々な山野草が写真付きで紹介されています。来園時にはぜひご覧くださいませ。なお、無料配布パンフレットやホームページでも季節の山野草を掲載しています。合わせてお楽しみください。(クリックで拡大)
→園内のみどころ(植物)
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取材協力:多摩森林科学園

多摩森林科学園の春(2話)
第1話:足元を見れば山野草の花たち(当記事)
第2話:桜の花の下に咲く山野草たち

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by u-t-r | 2019-06-18 16:00 | 花と山野草

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「現地で直接お話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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