八王子見て歩記/サクラ保存林/3月末-3

多摩森林科学園のサクラ保存林/3月末-3
第3話:「貴い方の衣色、御衣黄」
昭和林道〜見返り通り〜関山ベンチ〜仲通り
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「多摩森林科学園」最奥にある「山の上あずまや」を出発し、「サクラ保存林」を観賞しながら入園口に戻ります。大きく円を描くように園内の外周を通るコースです。他にも園路が何本もあるので、季節の花の時期によってコースを選ばれるといいでしょう。なお、科学園には森の動植物を中心に、樹木の見分け方、それぞれの季節の見どころ、森の機能などについて解説をしてくれる「森の案内人」さんがいらっしゃいます。ガイドツァーは無料です。詳しくは「多摩森林科学園」ホームページをご確認ください。ここからが桜の本当の見どころ。緑色の花を咲かせる御衣黄は起伏に富んだこのコースにあります。(クリックで拡大)
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昭和林道

「山の上あずまや」から「昭和林道」を通って「見返り通り」に出ます。道が赤茶けて見えるのはテーダ松の落ち葉です。樹高25〜30mまで成長する大木で、とても大きな松ぼっくりが成るんですよ。
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多摩地域では自然林や雑木林に混生する高木種として普通に見られる「犬桜(いぬざくら)」花期は4〜5月です。同じ場所に上溝桜(うわみずさくら)が植栽されていました。英名はBird Cherri。鳥などに食べられることによって種子が運ばれる被食散布と呼ばれる種子散布様式です。離れた場所どうしでも種子が移動しやすいため、開発等によって孤立・分断化した都市の林でも生き残りやすい。花期は4月です。この2種類の桜は近縁で非常によく似ているそうです。さてどっちの桜なんでしょう。
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2014年に長野県富士見町西岳国有林から導入されたカスミザクラ「唐松谷(からまつだに)霞桜」。北海道〜九州の冷温帯から暖温帯に分布する桜で、樹高10mを超える高木になります。花期は4月中旬〜下旬でヤマザクラより遅いため、観賞用として利用されることは少ないそう。真っ白な清楚な花を咲かせます。まだツボミすら付けていない。相当なお寝坊さんです。(クリックで拡大)
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「昭和林道」の途中にも仮設トイレがありました。入場者が多い桜の季節はトイレの数を増やしてくれているようです。トイレは3基で、他の場所と同じように手洗い場も置かれています。
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カーブを曲がった先に休憩所。ベンチを置いてある場所が園内に多いので、この日は座れないことはありませんでした。
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休憩所には枝垂桜が2本植栽されていました。右側の桜は「紅枝垂(べにしだれ)」。エドヒガンの栽培品種で、栽培の歴史は古く、平安時代にも記録があるそうです。現在でも寺院などには天然記念物に指定されるような大木がしばしば見られます。花期は4月上旬〜中旬。高〜い場所に花をつけていました。双眼鏡が必要です。(クリックで拡大)
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左側は1967年に埼玉県川口市の安行見本園から導入されたエドヒガン「秩父紅枝垂」。花はふつう淡紅色ですが、変異があり、花色の濃いものは「紅枝垂」とよばれることもあるそう。こちらもこんなに高いところに花が。
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見返り通り

「昭和林道」を外れて、36番標識から「見返り通り」に入ります。5本の園路が平行に走っていて、密度が高い桜の見どころです。
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1967年に神代植物公園から導入されたサトザクラの栽培品種「神代の苔清水」。「苔清水(こけしみず)」は明治時代の荒川堤にあった桜で、1916年に三好学により記載されました。花はほぼ白色で大輪一重咲き。花期は4月中旬なので、まだまだツボミでした。
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1966年に静岡県三島市の遺伝学研究所から導入された「衣通姫(そとおりひめ)」。遺伝研の竹中要氏が染井吉野の実生から選抜された栽培品種で大島町の大島公園の染井吉野から種子を採取して育成しました。周囲にあったオオシマザクラが交雑したと考えられています。名前は古事記などに伝わる王女の衣通姫(そとおりひめ)にちなみます。花期は4月上旬〜中旬。こちらもツボミ。
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1952年に千葉県松戸市の八柱霊園から導入されたサトザクラ「翁(おきな)」。木が見当たりません。手前の棒みたいな状態の桜が「翁」なのでしょうか。
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「見返り通り」は奥まで行くと折り返しになっていて、一段低い園路へ下ります。前回来た時は36番標識からの一方通行だったはず。4月からの桜の季節だけ交通規制をかけているようです。混みますものね。
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「見返り通り」の上の道と下の道。桜並木の中を下りていきます。
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1952年に千葉県松戸市の八柱霊園から導入されたサトザクラ「八柱の滝匂(たきにおい)」。まだツボミです。(クリックで拡大)
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1966年に静岡県三島市の遺伝学研究所から導入されたヤマザクラ「筑紫桜」。ヤマザクラの変種、ツクシヤマザクラです。西九州から南九州に分布しており、花や葉、ツボミが大型の桜です。花はふつう白色で大輪一重咲き、花期は4月上旬〜中旬です。ツボミが大分ふくらんでいました。(クリックで拡大)
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1967年に京都植物園から導入されたサトザクラ「京都の衣笠」。こちらもツボミ。八重より早い一重桜だからといって、必ずしも3月末に咲き始めるわけではないんですね。
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1967年に京都植物園から導入されたサトザクラ「京都の糸括(いとくくり)」。開花はまだでした。4月に入ればこの辺りは一面の桜になるんでしょうね。
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御衣黄(ぎょいこう)

来園される方のほとんどはこの希少な桜「御衣黄(ぎょいこう)」を目当てにしていることでしょう。「見返り通り」には、1967年に佐野園から導入された「佐野の御衣黄」、1968年に静岡県三島市の遺伝学研究所から導入された「禊(みそぎ)」の2株が植栽されています。

日本原産の「御衣黄」、花は大輪八重咲きで、江戸時代に京都の仁和寺で栽培されたのが始まりだといわれています。最大の特徴は開花したばかりの花が明るい緑色であること。徐々に黄色に変化していき、やがて花びらの中心部が赤く染まっていきます。「御衣」とは、貴族の着物のことを意味し、「黄」は緑色の花びらが平安時代の貴族の衣服の「萌黄色」に由来します。開花は染井吉野が散った後の4月中旬~下旬。こちらは「禊」。ピンクの花は隣の桜です。
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「禊(みそぎ)」のツボミ。八重咲きだけあって、開花はまだ先のようです。ピンク色のツボミで白い花をつける桜がほとんどの中、「御衣黄」はツボミも緑色でした。(クリックで拡大)
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見返り通りの続き

今歩いているのは「見返り通り」、下に見えるのは最下段の「釣舟草通り」です。このあたりは擂り鉢状の斜面に「仲通り」「昭和林道」を合わせて5本の園路が走っています。八重桜が多い場所なので4月中旬が楽しみです。
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詳しい説明板がない桜もあって、「海猫(うみねこ)」「従二(じゅうに)八重桜」「椿寒桜(つばきかんざくら)」「帆立」などが見られました。周辺はほとんどが八重桜のようです。2月中旬から3月上旬に咲く早咲きの「椿寒桜」は葉桜になっていました。(クリックで拡大)
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サトザクラ「仙台枝垂」は古くからある栽培品種で、花は白色、直径3.5cmで一重の桜です。亜高木で枝先は下垂します。花期は4月上旬〜中旬。ツボミも膨らんでもうすぐ咲きそう。(クリックで拡大)
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1967年に京都植物園から導入されたサトザクラ「京都の御車返(みくるまかえし)手鞠」。サトザクラの栽培品種で、明治時代の荒川堤にあったもの。一重咲きですが、時に花弁6・7枚の花をつけます。和名は、一重八重で言い争いになり、車を引き返して確かめたという言い伝えにちなみます。花期は4月上旬〜中旬。まだツボミでしたが、一重が咲くか八重が咲くか。
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サトザクラの栽培品種「市原虎の尾」。現在「市原虎の尾」として栽培されているものは、京都の市原にあったものから広まりましたが、江戸時代から栽培されていたと思われるそうです。花は白色で中輪八重咲き。名前の由来は枝先にたくさんの花がつく樹形から。花期は4月中旬〜下旬です。多分、この若木かと思われます。
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1966年に神代植物公園から導入されたサトザクラ「神代の駿河台匂(するがだいにおい)」。サトザクラの栽培品種で花は白色・半八重咲き。花に桜餅と同じクマリンの香りがあります。和名は駿河台の屋敷にあったことから。まだまだツボミ。
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関山ベンチ

「見返り通り」は終点で「釣舟草通り」と「仲通り」に分岐します。三叉に面した斜面にあるのが「関山ベンチ」。階段状にベンチが並んでいて、桜の眺めがいいところから人気のスポットです。(クリックで拡大)
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今歩いている道が「見返り通り」。「関山ベンチ」の下から階段で最下段に下りる道が「釣舟草通り」、最奥高台の道が「仲通り」です。桜が多いのは真ん中の「仲通り」。
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仲通り

桜の本数が多い「仲通り」を歩いていきましょう。
最初の桜は1952年に千葉県松戸市の八柱霊園から導入された「八柱の狩衣(かりぎぬ)」。サトザクラの栽培品種で白色で大輪一重の花をつけます。花弁はほぼ円形でツヤがあり、花が咲く時期に葉芽は伸びません。三好学が荒川堤で発見・命名しました。丸太状態。。
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サトザクラの栽培品種「仙台屋(せんだいや)」。原木は高知市の仙台屋という店にありました。花は紅色で大輪一重咲き。花弁の縁は色が濃く、若芽は赤褐色で、花弁の色と合わせて開花期には木全体が赤く染まるそうです。花期は4月上旬〜中旬。まだ早かったか。
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サトザクラの栽培品種「有明(ありあけ)」。明治時代の荒川堤にあったもので、江戸時代から栽培されていました。花は淡紅色で大輪八重咲き、芳香があります。花期は4月中旬〜下旬。八重桜を見るなら今回のような3月下旬ではなく、4月半ばがいいようですね。
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サトザクラの栽培品種「太白(たいはく)」。「有明」と同じく江戸時代から栽培されていました。花は白色で大輪一重咲き。花は3cmほどもあり、桜の中で最大級。薄い純白の花弁にしわがあります。花期は4月中旬〜下旬。説明板の後ろの桜には「駒繋(こまつなぎ』というプレートがかかっていました。これが「太白」?
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1985年に北海道松前町の桜見本園から導入された「静香(しずか)」。サトザクラの栽培品種で、浅利政俊が「天の川」と「雨宿」を人工交配させて1960年に育成しました。名前の由来は花に強い香りがあることから。花は白色で直径6cmの大輪八重咲き。花期は4月中旬〜下旬です。
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惜しくもここでタイムアップ。もう少しで「仲通り」を撮り終えるところでしたが、帰らなければなりません。続きは4月中旬の八重桜の見頃に来たいと思います。

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「仲通り」と平行して低い道を通る「釣舟草通り」。下を見るとベンチがありました。八重桜の季節には桜花の屋根がかかるのでしょう。次に来るのが楽しみです。
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取材協力:多摩森林科学園

多摩森林科学園のサクラ保存林/3月末(3話)
第1話:「高尾の桜はまだ咲きはじめ」森の科学館〜第2樹木園〜森の管理室〜柳沢林道
第2話:「大きな桜の咲く高台」柳沢林道〜遠見通り〜山の上あずまや
第3話:「貴い方の衣色、御衣黄」昭和林道〜見返り通り〜関山ベンチ〜仲通り(当記事)

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by u-t-r | 2019-04-23 16:00 | 八王子見て歩記

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「直接ご本人に会ってお話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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