八王子見て歩記/サクラ保存林/3月末-1

多摩森林科学園のサクラ保存林/3月末-1
第1話:「高尾の桜はまだ咲きはじめ」
森の科学館〜第2樹木園〜森の管理室〜柳沢林道
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高尾駅からほど近い多摩森林科学園。緑色の花が咲く珍しい桜「御衣黄(ぎょいこう)」を見に行ったのは、今から9年前の2010年)5月でした。サクラの栽培品種は江戸時代以前から多くの種類が育成されてきましたが、現代に引き継がれているのはソメイヨシノ(染井吉野)などほんの一部でしかありません。森林科学園の園内には8ヘクタールの広さを持つ「サクラ保存林」があり、日本全国の主要なサクラの栽培品種や名木、天然記念物などの接ぎ木クローンが総数約1,500本植えられています。つまり、サクラ保存林を1周すれば日本全国の桜をまとめて見られる!というわけです。資料によると、早咲きの河津桜が咲き始めるのは3月初旬、遅咲きの八重桜は4月下旬、中には5月上旬に咲く桜も。2か月にわたってお花見ができますね。初回は満開にはちょっと早めの3月末に行ってみました。高尾は都心より1週間くらい開花が遅いのです。(クリックで拡大)
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高尾駅〜多摩森林科学園

パンフレットによると、見学の所要時間はコースや体力によりますが、1〜3時間くらいだそう。歩いても10分ほどではありますが、体力保存のために行きは西東京バスに乗っていくことにしました。だってずっと上り坂だし。高尾駅から子仏峠行きをのぞく全路線が1停留所目の「森林科学園バス停」に停車します。道幅のせいでしょう。停留所に停まるのは行きだけ、帰りは歩いて駅に戻ることになります。
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バス停のすぐ先が多摩森林科学園の入口です。おお!もう桜が咲いている!
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花色と形から見てソメイヨシノでしょうか。陽当たりのいい場所なので早めに咲き出したようです。(クリックで拡大)
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森の科学館〜第2樹木園

多摩森林科学園で飲み物の自販機があるのは「森の科学館」前だけです。園内には水飲み場もありません。自前の飲みものをお持ちでない方、高尾駅で買い忘れた方はこちらでお買い求めください。歩くとかなりのどが乾きますよ。トイレは園内にも設置されていますが、科学館前トイレ、「山の下トイレ」、「中間トイレ」の3か所を除き仮設トイレとなります。
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「森の科学館」前に植栽されている桜。花粉親はサトザクラで、マメザクラ、ヤマザクラ、エドヒガン、オオシマザクラ4種の関与が推定されている八重咲き「はるか」の原木です。東日本大震災で被災した福島県では八重桜を復興のシンボルにしています。この桜も福島県に寄贈され、大河ドラマ主演の綾瀬はるかさんによって「はるか」と名付けられました。まだツボミですが、薄いピンクの花びらが重なって八重芙蓉に少し似た豪華な花が咲きます。(クリックで拡大)
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「森の科学館」を出発して「第2樹木園」に入ります。左の階段は樹木園の中央を通る園路、右は高尾街道沿いの歩きやすい道です。園路は幾筋もあるので見学の目的に合わせて選びます。私は右の平坦な道を歩くことにしました。
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ゆるやかな下り坂の先に橋が見えてきました。下を小さな沢が流れています。園路は変化に富んでいて歩き飽きません。
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多少の起伏はあるものの歩きやすい道です。第2樹木園は山野草が多い場所でもあります。園内には野生のムササビが生息しているそうですね。
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園内最初に出会った桜は、千葉県松戸市の八柱霊園から1971年に移植されたサトザクラ「八柱の八重紅虎の尾(やえべにとらのお」です。運動会のティッシュ花のように塊状に咲く淡紅色の八重桜です。八重には早い時期でしたので、まだツボミも付けていませんでした。
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〜森の管理室

「第2樹木園」から「森の管理室」までは森の中です。京都の佐野園から1967年に移植されたサトザクラ「佐野の普賢象(ふげんぞう)」。名前の由来は、雌しべが2本長く突き出ているようすが普賢菩薩が乗っている普賢象の鼻に似ているところから。ホワホワと柔らかそうな花びらが重なる八重桜です。室町時代から記録に残ると歴史ある品種です。こちらもまだツボミが小さい状態でした。
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1974年に導入された「雛桜(ひなざくら)」は、カンヒザクラとカラミザクラの交雑から育成した栽培品種。花は淡い紅色で中輪一重咲きの桜です。ピンクのツートンカラーが可愛い。育成者の名前から「古里桜(ふるさとざくら)」とも呼ばれます。(クリックで拡大)
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雛桜の隣りに咲いているのは説明板がなかった一重の白い桜。ソメイヨシノを見慣れた目には可憐で小さな桜が新鮮に映ります。(クリックで拡大)
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柳沢林道〜

「森の管理室」から先はいよいよ桜が続く「柳沢林道」です。上を通るコースとして「彼岸通り」もありますが、「柳沢林道」は道の両側の桜を眺められるのがいいところ。園内には最近新しく導入された桜が10種類あり、うち3種類がこの「柳沢林道」沿いに植樹されています。両側を丘に挟まれた谷間の道を歩いていきます。この日は快晴。お花見日和でした。常設のトイレ「山の下トイレ」は管理室のすぐ裏手にあります。
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桜属の中で最も原始的と推定される「深山桜(みやまざくら)」。日本をはじめ中国東北部・朝鮮半島・ロシア極東部の冷温帯から亜寒帯・亜高山帯に分布します。開花期が他の桜より遅く、5月上旬です。まだ枝に小さなツボミが付いた状態でした。
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2000年に千葉県鴨川市の東大千葉演習林から導入された「清澄の豆桜(まめざくら)」。小さな白い花が下向きに咲くのが特徴です。写真は桜の下から見上げて撮っています。(クリックで拡大)
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同じ2000年に兵庫県宍栗市山崎から導入された「山崎の近畿豆桜(きんきまめざくら)」。本州の日本海側の富山・石川・福井県、長野県南部と岐阜県から近畿・中国地方(広島県まで)に分布する桜です。樹高は低く、高くても4mほど。小さな木に小さな花をつける可愛らしい桜です。声優でいえば久野美咲ちゃん。(クリックで拡大)
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1967年に地元八王子の浅川実験林から導入された「丁字桜(ちょうじざくら)」。岩手県以南の東北地方〜九州までの太平洋側に分布する変種です。名の由来は、香辛料の丁字(クローブ)に花の形が似ることから。直径1.6〜2cmの小さな花を咲かせる桜です。花期は3月下旬から4月上旬にかけて。(クリックで拡大)
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「熊野桜(くまのざくら)」は2018年に新種として発見された桜で、熊野川流域を中心としたおよそ南北90km、東西60kmの範囲に多数の野生個体があることが確認されています。自生地での花期は3月中旬〜下旬で、染井吉野よりも早咲きです。白いテープが巻かれているのが熊野桜。移植されたばかりなので、まだ若木です。
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1971年に八王子市浅川実験林から導入された「浅川の丁字桜」。切り株になってました。枯れてしまったのかしらん。
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1967年に台湾から導入された鮮やかなピンク色の「柳田の緋寒桜(ひかんざくら)」。中国南部を中心に台湾やベトナムなどに分布します。石垣島には自生地があり、国の天然記念物に指定されています。ちなみに気象庁の桜開花予想は沖縄ではこの緋寒桜を対象にしているそうです。「緋寒桜」は「寒緋桜(かんひざくら)」「元日桜」などとも呼ぶようです。(クリックで拡大)
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1971年に新宿御苑から導入されたサトザクラ「新宿の上匂(じょうにおい)」。香りのある桜を総称して「香桜」や「匂桜」と呼び、特に香りが強いものには、上匂など栽培品種名が香りを意味する言葉がついています。 残念ながら切り株になっていました。
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1969年に山形県白鷹町薬師堂から導入されたエドヒガン「白鷹(しらたか)の薬師桜」。小ぶりな薄ピンク色の花をたくさん咲かせていました。(クリックで拡大)
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1966年に静岡県から導入された寒桜「内田の熱海桜(あたみざくら)」。カンヒザクラとヤマザクラの種間雑種の栽培品種で、関東以南の暖地、特に静岡県の熱海市周辺で多数生育しています。花期は2月上旬〜3月中旬と、桜の栽培品種の中では最も早く咲く花です。3月下旬のこの日には数輪の花を残してもう葉桜になっていました。(クリックで拡大)
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サトザクラの栽培品種で白色の花、中輪で半八重咲きの「八重左近(やえさこん)の桜」。京都御所の紫寝殿前には平安時代から左近の桜が植えられています。花期は4月上旬〜中旬です。八重の桜は全般に開花が遅いようですね。ツボミもない枝だけの状態でした。左近の桜はこの木でいいんでしょうか。
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2010年に高尾山で採取され植栽された「薮桜(やぶざくら)」。地元の桜だけあって元気に花を咲かせていました。(クリックで拡大)
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2008年に相模原市勝坂から導入されたマメザクラとエドヒガンの種間雑種「相模原の薮桜」。豆桜より花は少し大きめです。(クリックで拡大)
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1968年に京都植物園から導入されたヤマザクラ「京都の日吉桜」。小さな八重の花びらがマリーゴールドのように重なって咲きます。時期が早かったためまだ枝状態でした。
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「相模原の薮桜」と同じくマメザクラとエドヒガンの種間雑種「薮桜」。関東の南西部に自生します。花は白色、萼片(がくへん)と花柄(かへい)がピンク色で、いかにも桜らしい姿形。この桜は高尾山から採取されたそうです。少し手前にも高尾山の薮桜があったなぁ。(クリックで拡大)
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1966年に導入された三島市遺伝学研究所の山桜「三島の千原桜(ちはらざくら)」。ヤマザクラの変種であるツクシヤマザクラとオオシマザクラが交雑した栽培品種です。花は白色で大輪。半八重咲きと八重咲きの型が混在しているそうです。ツボミが膨らんでもう少しで咲きそう。八重桜の中にも早い遅いがあるようです。(クリックで拡大)
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1970年に静岡県立有用植物園から導入されたオオシマザクラ「石廊崎の潮風桜」。名前が素敵!オオシマザクラの変異種で、花弁は赤みがかり、花弁の先には濃いピンク色が残ります。花期は4月初旬なのでもうすぐ咲きそうです。(クリックで拡大)
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1966年に「三島の千原桜」とともに導入された三島市遺伝学研究所の里桜「福桜」。カーネーションのようなシワシワッとした八重の花が咲きます。ツボミがたくさん付いているものの、開花はもう少し先のようです。(クリックで拡大)
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サトザクラの栽培品種「二度桜(にどざくら)」の原木は岐阜県揖斐(いび)郡大野町にあり、1923年に「揖斐二度桜」として国の天然記念物に指定されています。一重咲きと八重咲きの花が混在する桜で、「二度桜」の由来は、一重咲きの花のあとに八重咲きの花が咲くところから。花期は4月上旬です。先陣の一重咲きが開店準備中といったところ。(クリックで拡大)
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2000年に富良野の東北大学演習林から導入されたオオヤマザクラ「富良野の大山桜」です。多摩森林科学園での平均開花日は4月1日、満開日は4月7日だそう。いや、あと1週間じゃ無理でしょうというツボミ状態でした。(クリックで拡大)
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3月末は早咲きの桜が終わり、一重桜はもうすぐ満開、八重桜はまだまだツボミといったところでした。「柳沢林道」はカーブの坂道を上がっていきます。
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9番の案内図によれば道なりに「柳沢林道」を歩いて行けば「里桜園」に出られるはず。桜を求めて歩いていきます。(クリックで拡大)
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「サクラ保存林」の桜たちは、必ずしも遊歩道沿いに植えてあるわけではなく、こ〜んな斜面に植栽されているものもあります。遠すぎて説明が全然見えない。ゴルフ練習場のヤード表示じゃないんですから。望遠レンズで覗いてみたら、「鬼無稚児(きなしちご)桜」、「若名の大村桜」、「膝立(ひざたて)の天王桜」と書いてありました。
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取材協力:多摩森林科学園

多摩森林科学園のサクラ保存林/3月末(3話)
第1話:「高尾の桜はまだ咲きはじめ」森の科学館〜第2樹木園〜森の管理室〜柳沢林道(当記事)
第2話:「大きな桜の咲く高台」柳沢林道〜遠見通り〜山の上あずまや
第3話:「貴い方の衣色、御衣黄」昭和林道〜見返り通り〜関山ベンチ〜仲通り

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by u-t-r | 2019-04-09 16:00 | 八王子見て歩記

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「直接ご本人に会ってお話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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