八王子見て歩記/日本工学院卒業展2019-2

平成31年(2019年)日本工学院卒業展
第2話:産学連携/地域の課題・問題は学生の力が解決する
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少子高齢化の影響で、学園都市八王子でも学生さん向けワンルームの空き室が増えています。特に築年数が経過した物件はその傾向が顕著で、ご退室後の簡易リフォーム、つまりクリーニングや壁紙の張り替えなどのお手入れだけでは競争力が低下した状態のままになってしまいます。空き室が増えると賃貸経営が苦境におちいることもあり、私どもでも色々な方策を提案してきました。ユニットバスを分離してシャワールームと独立トイレにリメイクしたり、中にはワンルーム2室を繋げて広い2DKに間取り変更したオーナー様さえいます。いっそ、今風にリフォームしてしまいたいのですが、既存の物件にかけられる建築工事費には限度があります。そんな悩みをかかえた私どもは、日本工学院八王子専門学校様と産学連携で新しいアイディアを出していただくことになりました。

日本工学院八王子専門学校と産学連携

課題物件はJR八王子駅北口から徒歩14分のワンルームマンションです。閑静な住宅街の中にある6帖洋室にユニットバスが付いたごく普通のお部屋。
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今回は机上のプラン作りではなく、優秀作品1点を実際に施工してみようというコンセプトです。もちろん、オーナー様に御請求できるわけもなく、当社の企画費として予算をひねり出しました。テクノロジーカレッジの学生さん72人はどんな提案を考えてくださったのでしょう。
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UTR不動産による課題発表・説明会を開催したのが昨年の11月初旬。その後、課題物件の見学・調査と敷地周辺の調査、現地調査・実測は11月半ばころ。計画案作成とスタディを終えて、作品発表・講評会が12月20日ころ。72点の作品の中から第一次選考で12作品を選出し、最終的に8作品をご提案いただきました。最終選考は日本工学院専門学校様と当社で行い、最優秀作1作品を決定しました。
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作品1:「There is no life feeling」

会場に展示されたのは上位12作品と、最優秀作1作品の合計13プランです。順に作品をご説明していきます。最初は「There is no life feeling」。一人暮らしをしている人は、収納の少ないワンルームゆえ物が部屋にあふれていることが少なくありません。こうした雑然とした生活感をなくすため天井までの壁面収納を設置し、既存のクローゼットの棚をデスクとして使用するプランです。(クリックで拡大)
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クローゼットを閉じてしまえば、表に出ているものが何もない空間になります。(クリックで拡大)
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作品2:「カスタマイズする部屋」

「多種多様な人が住める、変化する部屋」がテーマの作品です。家具や収納するものに合った大きさに変えられる可動棚、フックで色々なものを引っ掛けて飾る有孔ボード、収納の目隠しとキッチン出入り口の2つの開口部は好きな色にチェンジできるロールスクリーン付き。お部屋に変化をつけやすい工夫です。(クリックで拡大)
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2つの家形の開口部がチャームポイント。左は机兼収納、右はキッチンとつながっています。(クリックで拡大)
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作品3:「両立する部屋」

作品のテーマは「仕事と趣味が両立する部屋」。玄関からベランダまで通じるフラットなタイル床を設け、たとえばサイクルスポーツが趣味の人なら自転車をそのまま部屋に持ち込めます。仕事のシーンでは、玄関の大型姿見で身だしなみチェックもばっちり。キッチンを居室内の壁に移動し、反対側の壁は通しの大きなデスクスペースになります。(クリックで拡大)
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こちらの作品の設計者さんはイメージパースがとっても見事でした。雰囲気出てますよねぇ。(クリックで拡大)
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作品4:「吊るす収納」

作品「吊るす収納」は、部屋全体に鉄筋を張り巡らせ、そこへ引っ掛けるかたちでものを収納するアイディアです。また、もとからあった壁を撤去して部屋に開放感を与えシースルーの網掛けの壁を配置、新たな収納スペースとします。押し入れの扉もなくして棚部分を改造、机として使うことにしました。(クリックで拡大)
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部屋中に鉄筋があるので、服や傘を引っ掛けたり植物を吊るすなど自由に利用できます。洗濯物をいっぱい干せそう。それにしても1本の針金を複雑に曲げるのはさぞ大変だったでしょうね。(クリックで拡大)
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作品5:「ウッドモノリスを用いた自由空間の追求」

作品名にあるモノリスはこの場合一枚岩のことだそうです。機能を集中した1枚のパーテーションの中にテレビやドアホン、コンセント、有線LAN端子などを集結しこれを移動可能とすることで空間を有効に利用でき、かつ自由な空間を演出できます。モノリスは天井に設けた格子と伸縮脚とで好みの場所に固定できます。間取模型の右横にあるのがウッドモノリスです。(クリックで拡大)
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ウッドモノリスと天井格子との関係がよく分かるアングルです。天井格子に引っ掛けるんですね。体育会系の学生さんなら洗濯物をいっぱい干せそうと思ってしまいました。特に雨の日!(クリックで拡大)
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作品6:「庭でくらすへや」

課題物件が抱える問題を解決しようという提案が「庭でくらすへや」です。物件の近隣にはファーストフード店やファミリーレストラン、コンビニなどが多く、銭湯が数カ所もある立地条件はすばらしいが、風通しや日照に難点があるのではと判断したそうです。窓を開けた状態で風通しや日照を確保し、室内を暗くするカーテンは避けたい。そこで考えたのが植物を利用することでした。ベランダと室内に植物を使った目隠しを置き、外からの視線を柔らかく遮りながら風と光を採り入れようという斬新な作品です。(クリックで拡大)
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ベランダから室内まで緑でいっぱい!とってもきれいな作品です。当社で拝見した時には社員たちから「おお〜〜っ!」という声があがりました。(クリックで拡大)
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作品7:「紅い物件」

「紅い物件」は、デザイン性、独自性、実用性の3点に着目したリノベーション案です。床はフローリングに、壁は古木タイルに、収納家具は天然木化粧合板にと、木の素材感を活かした温かみのある空間を実現しました。また、既存の押し入れに加え収納付きの畳ベッドや飾り棚、玄関には帽子掛けや傘掛けなど収納を多く設けています。(クリックで拡大)
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木をふんだんに使っているので、ほっとするお部屋になると思います。キッチンの床は淡いピンクタイル+白タイルのチェッカーづかいで汚れに強く、しかもおしゃれ。(クリックで拡大)
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作品8:「落ち着く空間」

作品コンセプトは「落ち着いて過ごせる部屋」。設計者の学生さんは丹念に情報を収集したようです。現入居者様の分析、八王子の主な希望賃貸の希望間取り、希望家賃、希望広さ、希望築年数、希望駅徒歩の分析グラフ。物件と主な商業施設の距離、物件周辺のスーパー・コンビニをはじめ、公園に至るまでのマップまでプレゼンテーションボードに掲載していました。「主な採光面…西」の後に「(夕日が奇麗」と書いてありました。感性豊かな方なんでしょうね。ベッド側面の壁に収納棚を設け、目隠しのために格子を2か所作っています。(クリックで拡大)
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間取りにもよりますが、ワンルームはドアを開けるとプライバシーが丸見えになってしまうことも多いです。ベッド横と収納横のフェンスが私生活を隠してくれます。女の子が喜んでくれそうな工夫です。(クリックで拡大)
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作品9:「レイモンド バージョンⅡ」

本をメインに本棚を多く設けるプラニングです。本棚の形が変わっていて、斜めに板を配置してクロスさせる変わった作り。通常読まない本が下の方になり、よく読む本を上に重ねるようにしたそうです。壁棚もくねくね曲がっていて、なんだか不思議な空間でした。折り紙細工のような板は天井間接照明です。(クリックで拡大)
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この作品の見どころはなんといっても変形棚でしょう。本や雑貨を置いたら雰囲気がいいだろうなと思いました。(クリックで拡大)
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作品10:「Multi Lofts」

ワンルームのコンパクトな空間を高さ方向を利用して有効活用するプランです。高さ70cmと1100cmの低いロフトを設置し、部屋全体を大きな階段のようにします。高いロフトの下にはローベッドを入れて眠るスペースに。低いロフトの方は一部をデスクとして使います。ロフト下は収納スペースを兼ねています。いわば2階建ての部屋。床下スペースは床はコルク材を利用し足に優しく、かつ遮音性を高めます。(クリックで拡大)
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このように室内が3階建てに。床下で寝るのはどうなの?という声もあがりましたが、意外に寝台車みたいで落ち着くかもしれない。(クリックで拡大)
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作品11:「間仕切りのない二空間」

一人暮らしの学生さんは部屋が散らかりがち。それは室内の寝食スペースが分離してないからではないか。2つを分離することで他物件との差別化を図ろうというアイディアです。現状の部屋は台所より居間の方が低くなっていますが、居間側の床を高くすることでレベル差を解消して室内全部をフラットにつなげます。ベッドと机は寝るスペースに、ソファーとテーブルは生活スペースに置き、間には低い収納を設置して間仕切りを使わずに部屋を空間的に分離します。この収納は寝室側・居間側両方から使えるよう工夫されています。(クリックで拡大)
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収納の陰にベッドがあります。ベッド周りがドアから見えないよう目隠しを置くアイディアが何案かありました。実際にワンルームに住んでいる学生さんにとって切実な悩みなんでしょうね。(クリックで拡大)
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作品12:「Hobby room」

最近の学生さんの趣味には読書やゲーム、映画鑑賞などが上位に挙げられているそうです。6帖の洋室にロフトを取り入れる事で無駄な空間を有効活用して、ロフト上は寝室に、下のスペースはネットカフェのような空間になります。いわばネットカフェのような空間を作って趣味に没頭できるようにしようというアイディアです。けっこう大きめのテレビが入り、ローソファーと相まって、まさにネットカフェ空間。住み方次第ではロフト下は収納スペースにもなります。机兼テーブルはロフトの前の空間に。窓際には収納がひとつ増えているようです。(クリックで拡大)
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模型はロフトの床が外された状態で展示されていました。ロフトで寝起きするためには天井高が意外に必要になります。最初からロフト付きワンルームとして建てられた物件は内部は2階建てなのに外観は3階建ての高さの建物になっています。あるオーナー様。ロフトベッドを部屋に設置したら、天井が目と鼻の先。天井を削る工事を行って高さを確保されていらっしゃいました。(クリックで拡大)
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次回は最優秀に選ばれた作品をご紹介します。

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日本工学院八王子専門学校様ではありませんが、某工科系専門学校を出た知人の失敗談。彼は卒業後、ビル屋上に置かれるキュービクル(高圧受電設備)の設計施工会社に入社しました。図面を引いて製造現場にまわして、の設計技師さんです。ある日、現場の工員さんが憤慨して設計室に上がってきました。「こんなの作れるわけないじゃないか!」。引いた図面は建物の平面形に合わせた多角形の変形筐体だったそうです。「建物と一体化してきれいだと思ったんだけどなぁ」。実際の設計を経験しないで卒業した悲劇でした。

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日本工学院卒業展2019(3話)
第1話「日本工学院八王子キャンパスの一大イベント」
第2話「産学連携/地域の課題・問題は学生の力が解決する」(当記事)
第3話「産学連携/最優秀作品 "Grand jete"」

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by u-t-r | 2019-06-04 16:00 | 八王子見て歩記

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「直接ご本人に会ってお話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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