花と山野草/高幡不動の彼岸花(後編)
2018年 10月 23日
後編:馬場あとの彼岸花たち
高幡不動の彼岸花(東京都日野市)
後編では彼岸花の群生地を探して、曲輪から八十八ヵ所巡拝路へ。そして「馬場あと」へ行ってみます。
高幡不動の彼岸花は、境内奥の「馬場あと」と周辺の木立の中に群生しています。もちろん、自然に生えてきたわけではありません。地元の東京日野ロータリークラブ様が創立五十周年事業として金剛寺様に提案し、球根三万個を奉納。計画を知った信徒様たちからさらに四万個が寄せられ、境内の高幡山に設けられた八十八カ所巡りのコース沿いに植えられてきました。その後も続々と奉納が続き、高幡不動尊山報によれば、平成28年(2016年)7月末には10万3,500株を超えているそうです。植栽地は高幡城址(愛宕山)の馬場跡広場を中心に、山内四国八十八ヵ所巡拝路や境内一円に及んでいるそう。日野RC様と檀信徒様が心を合わせて整備され続けてきたのですね。今では毎年9月初旬から中旬にかけて、赤・白・黄色の彼岸花の名所となっています。
森の中の彼岸花
曲輪を後に、教えていただいた「馬場あと」を目指して「山内八十八ヶ所」の第三十八番〜第四十番と歩いていきます。赤いものが見えると思ったら、お地蔵様のちゃんちゃんこばかりなり。
おっ!彼岸花らしきものが!と思ったら、花が散った後の茎状態。彼岸花ならぬ彼岸茎。(クリックで拡大)
彼岸花って、散ったあとはこういう姿になるんですね。放射状に伸びた先が膨らんでいました。一般に、球根で増やす彼岸花ですが、結実する確率が低いだけで、実はけっこう種ができるそうですよ。上手く受粉できると、11月くらいに黒光りした大豆くらいの大きさの種をつけます。(クリックで拡大)
ようやく見つけた咲いている彼岸花一輪。このあたりは花が終わるのが早かったようです。(クリックで拡大)
第五十番のお地蔵様が「見晴らし台」と「馬場あと」の分岐です。
右のゆるやかな坂道を下りると「馬場あと」に着きます。緑の茎がいっぱい見えてきた。
馬場あとの彼岸花
入口付近の彼岸花は、ほとんど散ってしまっていて、緑色の茎を残すばかりとなっていました。あと1週間早く訪れていたら満開の花畑だっただろうに。これじゃ、まるでニンニクの芽です。(クリックで拡大)
「馬場あと」下段へ下りていってみましょう。彼岸花の開花には気温が関係しているそうですね。
彼岸花は低温期間を経験するとバーナリゼーション(春化処理)を行い、発育の可能な温度範囲である10〜30℃の環境下で花芽分化および雌ずい形成をはじめます。自然条件下では温度が上昇に向かう4月下旬から花芽分化が始まるようです。雌ずい形成期に達すると、適温は20℃付近に低下します。自然環境下での開花が9月中・下旬になることや関東での開花が関西より10日ほど早くなるのは、この発育適温の低下によるものといえます。(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科 森 源治郎先生)
え〜、つまり、彼岸花は寒い時期を経験すると花を咲かせる準備をはじめて、暑い時期にスクスク育ち、次にまた寒くなったら花を咲かせると。だから9月に花を咲かせるのか。おもしろいことに、最低気温20度を超える環境下では常緑になるものの、花が咲かないそうです。
参考サイト:日本植物生理学界「彼岸花はどうやって季節を知るのですか?」
おもしろいことに、下段に近づくにつれて、花が残った株が増えてきました。生育条件のうち「次にまた寒くなったら花を咲かせる」が影響しているのかもしれませんね。森の中や木陰の株は早く咲き終わっていたのに対して、下段は陽当たりがいい場所ですから。(クリックで拡大)
撮影した11時現在で、下段にはこのように陽があたっていました。赤い花がチラホラ見えています。
彼岸花の花畑のまん中に東京日野ロータリークラブ様が建立した記念碑が立っていました。(クリックで拡大)
彼岸花植栽記念
武蔵野も
富士も
一望
曼珠沙華
平成二十八年四月五日
記念碑のまわりには花を咲かせた彼岸花が多かったように感じました。陽当たりなんでしょうけどね。(クリックで拡大)
この写真だけ見ると、まるで満開時期に来たかのようです。(クリックで拡大)
咲いていたのは赤い彼岸花ばかりでした。ほかに白と黄色も植えてあったはず。もうちょっと早く来ていれば…。(クリックで拡大)
霊園斜面の彼岸花
「馬場あと」を中心に植えられている彼岸花ですが、霊園側の斜面にもたくさん生えていました。こちらも整備されているようです。陽当たりがいいのに、すべて散ってしまっています。早く咲いてしまったのか。
階段を下りて霊園を通らせていただきます。
霊園側の彼岸花は、このように段々畑状に植えられています。満開の時期になると真っ赤な背景になるのでしょう。
階段沿いにも彼岸花が咲いていました。
霊園を抜けると大日堂の裏手に出ます。そのまま奥殿、不動堂を抜ければ仁王門はすぐです。こちらのルートを通ると、「馬場あと」は近いですね。来年は花盛りの時に来てみようと思います。帰り道の参道には屋台がたくさん並んでいました。年甲斐もなくうきうきしてしまいます。
帰り道に撮ったススキと不動堂。日本のお寺には秋の七草がよく似合います。(クリックで拡大)
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花と蝶はよく似合います。「馬場あと」の彼岸花に停まっていた黒いチョウチョ。停まっていたのはアゲハチョウでした。彼岸花には毒があるといわれますが、どうやら花の蜜には毒がないようです。アゲハチョウは特に彼岸花の蜜を好むらしいです。
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高幡不動の彼岸花(2話)
前編:急峻な山道を上って彼岸花の群生地へ
後編:馬場あとの彼岸花たち(当記事)
高幡不動の彼岸花(東京都日野市)
後編では彼岸花の群生地を探して、曲輪から八十八ヵ所巡拝路へ。そして「馬場あと」へ行ってみます。
高幡不動の彼岸花は、境内奥の「馬場あと」と周辺の木立の中に群生しています。もちろん、自然に生えてきたわけではありません。地元の東京日野ロータリークラブ様が創立五十周年事業として金剛寺様に提案し、球根三万個を奉納。計画を知った信徒様たちからさらに四万個が寄せられ、境内の高幡山に設けられた八十八カ所巡りのコース沿いに植えられてきました。その後も続々と奉納が続き、高幡不動尊山報によれば、平成28年(2016年)7月末には10万3,500株を超えているそうです。植栽地は高幡城址(愛宕山)の馬場跡広場を中心に、山内四国八十八ヵ所巡拝路や境内一円に及んでいるそう。日野RC様と檀信徒様が心を合わせて整備され続けてきたのですね。今では毎年9月初旬から中旬にかけて、赤・白・黄色の彼岸花の名所となっています。
森の中の彼岸花
曲輪を後に、教えていただいた「馬場あと」を目指して「山内八十八ヶ所」の第三十八番〜第四十番と歩いていきます。赤いものが見えると思ったら、お地蔵様のちゃんちゃんこばかりなり。
おっ!彼岸花らしきものが!と思ったら、花が散った後の茎状態。彼岸花ならぬ彼岸茎。(クリックで拡大)
彼岸花って、散ったあとはこういう姿になるんですね。放射状に伸びた先が膨らんでいました。一般に、球根で増やす彼岸花ですが、結実する確率が低いだけで、実はけっこう種ができるそうですよ。上手く受粉できると、11月くらいに黒光りした大豆くらいの大きさの種をつけます。(クリックで拡大)
ようやく見つけた咲いている彼岸花一輪。このあたりは花が終わるのが早かったようです。(クリックで拡大)
第五十番のお地蔵様が「見晴らし台」と「馬場あと」の分岐です。
右のゆるやかな坂道を下りると「馬場あと」に着きます。緑の茎がいっぱい見えてきた。
馬場あとの彼岸花
入口付近の彼岸花は、ほとんど散ってしまっていて、緑色の茎を残すばかりとなっていました。あと1週間早く訪れていたら満開の花畑だっただろうに。これじゃ、まるでニンニクの芽です。(クリックで拡大)
「馬場あと」下段へ下りていってみましょう。彼岸花の開花には気温が関係しているそうですね。
彼岸花は低温期間を経験するとバーナリゼーション(春化処理)を行い、発育の可能な温度範囲である10〜30℃の環境下で花芽分化および雌ずい形成をはじめます。自然条件下では温度が上昇に向かう4月下旬から花芽分化が始まるようです。雌ずい形成期に達すると、適温は20℃付近に低下します。自然環境下での開花が9月中・下旬になることや関東での開花が関西より10日ほど早くなるのは、この発育適温の低下によるものといえます。(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科 森 源治郎先生)
え〜、つまり、彼岸花は寒い時期を経験すると花を咲かせる準備をはじめて、暑い時期にスクスク育ち、次にまた寒くなったら花を咲かせると。だから9月に花を咲かせるのか。おもしろいことに、最低気温20度を超える環境下では常緑になるものの、花が咲かないそうです。
参考サイト:日本植物生理学界「彼岸花はどうやって季節を知るのですか?」
おもしろいことに、下段に近づくにつれて、花が残った株が増えてきました。生育条件のうち「次にまた寒くなったら花を咲かせる」が影響しているのかもしれませんね。森の中や木陰の株は早く咲き終わっていたのに対して、下段は陽当たりがいい場所ですから。(クリックで拡大)
撮影した11時現在で、下段にはこのように陽があたっていました。赤い花がチラホラ見えています。
彼岸花の花畑のまん中に東京日野ロータリークラブ様が建立した記念碑が立っていました。(クリックで拡大)
彼岸花植栽記念
武蔵野も
富士も
一望
曼珠沙華
平成二十八年四月五日
記念碑のまわりには花を咲かせた彼岸花が多かったように感じました。陽当たりなんでしょうけどね。(クリックで拡大)
この写真だけ見ると、まるで満開時期に来たかのようです。(クリックで拡大)
咲いていたのは赤い彼岸花ばかりでした。ほかに白と黄色も植えてあったはず。もうちょっと早く来ていれば…。(クリックで拡大)
霊園斜面の彼岸花
「馬場あと」を中心に植えられている彼岸花ですが、霊園側の斜面にもたくさん生えていました。こちらも整備されているようです。陽当たりがいいのに、すべて散ってしまっています。早く咲いてしまったのか。
階段を下りて霊園を通らせていただきます。
霊園側の彼岸花は、このように段々畑状に植えられています。満開の時期になると真っ赤な背景になるのでしょう。
階段沿いにも彼岸花が咲いていました。
霊園を抜けると大日堂の裏手に出ます。そのまま奥殿、不動堂を抜ければ仁王門はすぐです。こちらのルートを通ると、「馬場あと」は近いですね。来年は花盛りの時に来てみようと思います。帰り道の参道には屋台がたくさん並んでいました。年甲斐もなくうきうきしてしまいます。
帰り道に撮ったススキと不動堂。日本のお寺には秋の七草がよく似合います。(クリックで拡大)
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花と蝶はよく似合います。「馬場あと」の彼岸花に停まっていた黒いチョウチョ。停まっていたのはアゲハチョウでした。彼岸花には毒があるといわれますが、どうやら花の蜜には毒がないようです。アゲハチョウは特に彼岸花の蜜を好むらしいです。
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高幡不動の彼岸花(2話)
前編:急峻な山道を上って彼岸花の群生地へ
後編:馬場あとの彼岸花たち(当記事)
by u-t-r
| 2018-10-23 16:00
| 花と山野草