八王子見て歩記/松姫さま四百年祭-4

稚児たちをお供に御縁巡り
松姫さま四百年祭-4(4月16日甲州街道)
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珍しく快晴の4月16日正午前。甲州街道に面した八日町の八王子エルシィの前に人だかりができていました。1週間の間、下恩方の心源院様に里帰りされてた松姫さまが信松院へ帰る時がきたのです。

稚児たちと歩く松姫大行列のコースは全長約1kmです。エルシィ前から出発。甲州街道を歩いて本郷横丁東の信号を左折して、産千代稲荷に寄ってから中央線の踏切を渡ります。第七小学校の横を過ぎて松姫通りに出たらゴールの信松院はすぐ間近。本堂では今ごろ、松姫さまのお帰りを待って大法要の準備が進められていることでしょう。(クリックで拡大)
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AM11:50 出発前の八王子エルシィにて

稚児行列出発前の八王子エルシィ1階には、行列に付き添う曹洞宗の僧侶が集まっていました。緋色の法衣は信松院のご住職。
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松姫さま座像と現代の松姫さま一行。壷装束(つぼしょうぞく)に市女笠(いちめがさ)の旅装束は、八王子に逃げ延びてきた時のお姿です。松姫さま役の女性、実は松姫さまと同じ曹洞宗の本物の尼僧さんです。道理で背筋がピンと伸びていたわけだ。
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三人の女の子たちは、一緒に逃げた幼姫たち。この時、松姫さま21歳、武田勝頼の娘・貞姫4歳、実兄仁科盛信の娘・督姫3歳、家臣小山田信茂の娘・香具姫4歳でした。3〜4歳児といえば今でも身長100cmほど。この子たちよりずっと幼い姫を連れて山中を歩いたのです。八王子まつりのパレードでも当時の松姫さまを再現した4人が先頭を歩きます。
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1階入口に鎮座された松姫さま座像。松姫マッピ〜と一緒に記念撮影に応じていました。この日、松姫さま役の女性はお二人いまして、こちらのお一人は八王子商工会議所「女性経営者の会」シルクレイズからの参加です。
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幼姫たちに人気の松姫マッピ〜でした。
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松姫大行列は、御所水の里に庵(今の信松院)を構えた松姫さまも歩いただろう宿場町、甲州街道八日市宿から出発します。北条氏の時代の八王子中心街は、今の元八王子あたり。八王子城落城にともなう戦乱で旧市街は焼失してしまい、徳川の治世になってから八王子三宿として横山・八日市・八幡が新たに整備されたのです。八日市宿は横山宿と並び、本陣と脇本陣が置かれて八王子の中心街として栄えました。
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先頭を歩く4色の幟旗(のぼりばた)に染められた文字は、道元禅師様が宝治2年(1248年)に曹洞宗の大本山に奉請された時の開堂説法で詠まれた偈頌(げこう)だそう。今までの「大仏寺」という寺号を「永平寺」に改称し、さらに山号を「吉祥山」と命名、めでたい山であると顕彰されました。幟旗は緑→黄→赤→白の順に読み下します。

:諸仏如来大功徳(しょぶつにょらいだいくどく)
:諸吉祥中最無上(しょきちじょうちゅうさいむじょう)
:諸仏倶来入此処(しょぶつともにきたってこのところにいる)
:是故此地最吉祥(このゆえにこのちさいきちじょう)
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AM12:00 松姫大行列出発

松姫さま座像が御輿に乗り、出発時間となりました。見守られるのは心源院ご住職。
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エルシィ前を出発したら、東京環状と甲州街道が交差する八幡町の交差点を斜めに横断します。八王子警察署のおまわりさんたちが十字路の信号をすべて赤に切り替え、車を完全に止めました。
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松姫大行列の先頭は幟旗を掲げた信松院の檀家さん、続いて法螺貝を吹く僧侶二人、旅姿の松姫さまと幼姫3人、御輿に乗った松姫さま座像、産千代稲荷の神主さん、最後は心源院と信松院の両ご住職の順です。
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午後12時6分。歩道に集合していた稚児たちが紅白の引き綱を持って歩きはじめます。松姫大行列に合流です。この日のために用意されたお揃いの稚児装束が可愛らしい。
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左右をしっかり守るのはお父さんとお母さんたち。
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気がつくと鎧武者が4人加わっていました。うち二人は武田菱です。
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甲州街道の1車線を交通規制で止めて行列は進みます。いつもの甲州街道なのにどこか非日常的な光景でした。車線と行列との間は警察官の皆さんが見守ります。
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最後尾はポニーの馬車に乗った可愛いお坊さん。心源院ご住職の息子さんです。
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この頃には歩道がすごいことになっていました。大行列が見えない〜〜!
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AM12:26 産千代稲荷へ

本郷横丁東の信号を左折して、行列は産千代稲荷へ向かいます。産千代稲荷は、大久保長安屋敷跡に建てられた神社です。かつての主君の姫が御所水の里に健在であることは、まもなく移住してきた同心たちの知るところとなりました。報恩のために生業の手助けにくる者、贈り物を持ってくる者もあって、幼姫3人を育てていた松姫さまを支援する遺臣たちが増えていきました。武田氏へ仕えていた大久保長安もそのひとりで、陰に陽に援助の手をさしのべるようになりました。今、信松院のある場所へ立派な草庵を建てて寄贈したのも彼でした。
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産千代稲荷はふだんは静かなところですが、この日は前の道路を車輛通行止め。たくさんの参拝者が集まりました。前で待っていた皆さんに迎えられて、松姫大行列はゆっくり進みます。
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午後12時39分。御神楽が奉納される中、松姫さま一行は境内へと階段を上がっていきます。
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ここでお稚児さんたちとしばしの別れ。産千代稲荷前の駐車場で30分ほど休憩の後、みんなで信松院へ最後の大行列です。
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今年(2016年)2月に建立されたばかりの客殿に入る松姫さま。お出迎えの神事が行われ、400年ぶりに主従の対面が叶いました。
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長安祭が同時開催されたこともあり、産千代稲荷前の道路には屋台が何軒も並び、まるでお祭りのよう。いや、お祭りなんですけど。
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カメラで、スマホで、写真を撮る方が多数いらっしゃいました。松姫さまのご命日は元和2年(1616年)4月16日。信松院では月命日の毎月16日に一般公開されている宝物殿の松姫さま坐像ですが、地元八王子市民でも初めてご覧になる方が多かったようです。それだけでも今回の行事の意味があったように思います。八王子まつりの先頭を歩く松姫さま一行も、市民の皆さんに一層の親しみを持って迎えられることでしょう。なにせ、うちの若手なんてついこの間まで「あの人だぁれ?」なんて言ってたんですから。
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取材協力(撮影許可をいただいています):深澤山心源院、金龍山信松院、産千代稲荷

松姫さま四百年祭(全6話)
第1話「四百年ぶりの里帰り」
第2話「修行された地で里帰り大法要」
第3話「善男善女に送られて」
第4話「稚児たちをお供に御縁巡り」(当記事)
第5話「松姫通りを信松院へ」
第6話「四百回忌大法要」

松姫さま(全7話)
→その1「清和源氏の名門武田家の姫君」
→その2「高遠城陥落と兄盛頼の死」
→その3「武田氏滅亡と流転の旅」
→その4「逃避行-甲斐の国を逃れる」
→その5「信松尼となった松姫さま」
→その6「武田家の遺臣たちに慕われて」
→その7「最終話:松姫さまの残されたもの」

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by u-t-r | 2016-08-09 16:00 | 八王子見て歩記

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「直接ご本人に会ってお話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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