八王子見て歩記/靴のマルタカ(前編)

前編:八幡町で昭和23年創業の靴屋さん
靴のマルタカ/八王子市八幡町
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八幡町の靴のマルタカ様は終戦後間もなくの昭和23年(1948年)に創業された靴専門店です。甲州街道に面したお店は、徒歩ならJR八王子駅から西放射線ユーロード経由で20分ちょっと。今では駅周辺が開けている八王子ですが、昭和50年(1975年)くらいまでは、甲州街道沿いのアーケード商店街が街の中心でした。さらに戦国時代までさかのぼれば、八王子城下(今の元八王子)からはじまった八王子。北条氏が滅ぼされた後は現在の市街地へ街が移転されて、まず甲州道中(甲州街道)が整備され、東から横山・八日市・八幡の三宿が開かれました。なぜ八幡町で靴屋さんをはじめられたのか、代表取締役の高橋様にお話しをうかがってきました。

檜原村から八王子へ

「当店の創業者である父の出身は檜原村です。場所がら、木こりや炭焼き仕事をする生活でしたが、元から手先が器用だった父は、自家用に下駄を作ることもあったそうです。20代のころ、本郷横丁で八百屋をしていた伯父を頼って八幡町に土地を買って移り住みました。山から木を伐りだしたり材木屋で買ったりして、今の場所に家を建てました。当時、知人に下駄の製造をしている方がいてね。その方から本格的な下駄の作り方を教わったんだそうです。」

「子どものころの店は甲州街道側が店舗で、間に中庭を挟んで、奥側が下駄を作る工場という間取りです。店頭に下駄を置いて売る台が並んでいたのを憶えています。店舗は同時に私たちの住まいでもあったわけで、1階には6畳一間にお勝手とお風呂が付いていました。表通りに面した縦長の地割りは、宿場町だったころの名残りなんでしょう。江戸時代は間口の広さに応じて課税されていたといいますから。商家では敷地の奥に蔵が建てられるところですが、うちの場合は奥を工場としました。」
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時代の移り変わり

「私が生まれた翌年の昭和29年ころ(1954年前後)には、横山町~八幡町の商店街に初代アーケードが完成しました。当時、八王子の中心街は甲州街道沿いで、買い物をするお客さんで歩道がいっぱいでした。」

「物心ついたころにはもう下駄の製造より仕入れが中心でしたね。当時はとにかくよく売れて、作るのが間に合わなくなっちゃったんです。父は遠く奈良まで足をのばして買い出しに行っていました。私も小学校高学年のころには身体が弱かった母の手伝いで鼻緒すげを手伝っていました。手伝わざるを得なかったというか…。ところで、下駄の鼻緒すげって、あれで意外とむずかしいんですよ。キュッと強く締めてやらないと履き心地が悪いしすぐ緩んじゃうもんですから。」

「当時は和装の方が多かったので下駄はよく売れました。その後、小学校低学年のころに運動靴も販売するようになったんです。世の中がだんだん洋装化していくにつれて、高校生のころには下駄と洋靴の売上げが半々くらいの割合になりました。」

「創業当時の懐かしい写真があります。ちょうど中元大売出しの時期だったんでしょう。サンダル50円、桐下駄100円、婦人草履250円。今から見るとずいぶんお安い。なにせ国家公務員大卒の初任給が2,990円の時代ですからねぇ。」
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店を継ぐ

「父から店を継いだのは20代のころでした。そのころは下駄の需要もずいぶん少なくなってしまい、靴専門店として時代の流れに沿っていこうと決心しました。最初は量販店への卸もやっていたんですよ。メーカーから直接仕入れてお得意先に卸す。数をやれば利益が出ましたが、リスクの割にお客様のお顔が見えない。どうも私の考え方とは違っていました。」

「今は店舗での販売オンリーの業務形態にしています。なぜかって?一人一人のお客様に時間をかけてお相手できるからです。仕入れは店の生命線。卸をやっていた経緯から今でもメーカーから直接仕入れています。なので、リーズナブルな価格でご提供できるわけですね。」

紳士靴売場にあった手書きPOP。ちょっと感心してしまいました。

ウレタンソールの特性について
ウレタンソールは”軽い””衝撃吸収力がある””耐摩耗性がある”など、履きやすい優れた素材として、多くの製品に使われていますが、長期間使わずに保存されていた場合、底のはがれ、ヒビ割れ等、”加水分解”と言う現象が起ります。
普通の使用状態においては、その消費期間内に起こることはありませんが、礼装用や、たまに履く靴など保存用には向きませんので、ご留意くださるようお願い致します。
尚、エーテル加工など経年変化を起しにくいウレタンもありますので、ご確認下さい。


どうです?量販店にはない心遣い。さすがは専門店といったところ。(クリックで拡大)
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アーケードの撤去

「昭和45年(1970年)に建てられた二代目アーケードが撤去されたのは、2年前の平成26年(2014年)11月です。今では追分近くの山形屋さんの近くにわずかに当時の姿を残すばかり。この60年の間に商店街もずいぶん変わっていきました。『とっくり亀屋に酒加島』の亀屋さんが旅籠だったなんて、今の人は知らないでしょうね。」

「商店も量販店さんに負けないよう創意工夫して頑張っていかなければいけないと思うんです。私は平成12年(2000年)にシューフィッターの資格を取得しましたが、これも、今後はお一人ずつのお客様に合わせてご紹介していかなければと考えたからです。当店では、目的・サイズに応じた靴選びだけでなく、インナー(中敷き)で、外反母趾などお足の状態に合わせて靴の調製・加工をするフィッティングをご案内しています。ぜひ一度ご相談ください。」
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次回はお店の中をご案内します。

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実は店主の高橋様は次男だそうです。お兄様は学者肌で、長じて学校の先生になられたとか。一緒にお店を切り盛りしている息子さんも同じく次男。お客様を相手のご商売では、人見知りしない気質こそ大切なのかもしれませんね。人当たりの柔らかい方です。お近くにお寄りの際はぜひ来店してみてください。

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取材協力:靴のマルタカ/東京都八王子市八幡町13-6
TEL.042-626-4628

靴のマルタカ(3話)
前編:昭和23年創業の靴屋さん(当記事)
中編:お店の中をご紹介(婦人靴〜子ども靴)
後編:お店の中をご紹介(紳士靴〜登山靴)

シューフィッティング(1話)
足のお悩みを緩和するシューフィッティング/靴のマルタカ

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by u-t-r | 2016-03-15 16:00 | 八王子見て歩記

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「直接ご本人に会ってお話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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