八王子見て歩記/杉本プリーツ-1

第1話:寝押しいらずのプリーツスカート
杉本プリーツ/八王子市東浅川町
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毎週月曜日はこわ〜い先生たちが校門でお出迎え。物差しで髪の毛の長さをチェックされたり、スカートの丈を測られたり。特に男の子は髪が伸びていると「床屋に行ってこい!」と一喝されてましたっけ。今は懐かしい服装チェックです。

いわゆる学ランと呼ばれる詰襟やセーラー服を最近めっきり見なくなりましたね。男子の詰襟は海軍士官の制服をモデルに、女子のセーラー服はイギリス海軍の水兵さんから。ともに軍服のデザインを参考にした制服です。1980年代後半になると、大都市圏の私立高校を中心に見栄えの良い制服を導入することが大流行。こうして今ではブレザーにプリーツ入りのミニスカート。柄入りの生地で仕立てたおしゃれなデザインが主流になりました。

プリーツってどうやって作るのでしょうか?縁あって、高尾駅からほど近い東浅川町の杉本プリーツ様に伺い、工場を見学させていただきました。お相手してくださったのは杉本社長様。お忙しい時間を割いてくださいました。

杉本プリーツ

当社は昭和40年(1965年)、世田谷でプリーツ加工業の杉本繊維として創業しました。会社設立は昭和43年(1968年)。その後、近隣に住宅が増えてきたため、八王子市初沢に工場を移転。今の八王子市東浅川町に移ったのは昭和47年(1972年)のことです。私どもは創業以来50年、婦人服・子供服のプリーツ加工を専門にたずさわってまいりました。

第一工場は、熱処理するための圧力蒸気釜を設置しており、主に型紙製作設備と高級婦人服の手加工プリーツを作っています。
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第二工場はマシーンプリーツ加工と制服の仕上げ加工です。
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プリーツ加工の歴史

夜寝る時に制服のスカートやズボンを新聞紙で挟んで布団の下へ入れる。そんな経験のある方は、おそらく50代以上ではないでしょうか。雨降りの後は服の折り目が伸びてしまってねぇ。クリーニングはお高いし、アイロンをかけるとツルツルになっちゃうので寝押ししたのです。最近は加工技術が進んだおかげで、濡れたくらいでは簡単にシワになりません。

繊維の熱加工性を利用して、布地に耐久性の高い折目(プリーツ)を付ける技術、いわば折り目の形状記憶加工がプリーツ加工です。プリーツの歴史は遠く紀元前3000年頃の古代エジプト新王国時代にまで遡ります。正妃ネフェルティティの像に見られるプリーツが世界最古と言われているのです。この時代には王や王妃など高貴な人物の衣服にプリーツが用いられていました。薄い麻地に放射線状に施されたプリーツは機能性や装飾性以外に、「雲間から見える太陽光線に似ていることから神の象徴である」とされました。

中世から近世にかけては、女性が裾の長い衣服を着用していたので、歩きやすくして運動性を出すためにプリーツを多用します。通常の服の3倍以上の布が必要で、また、当時はパーマネントプリーツ加工が困難だったため、相変わらず王侯貴族や富裕層などのお金持ちしか着られない憧れのデザインとなっていました。それが今ではごく普通の学生服に用いられるようになるのですから技術の進歩はすばらしい。
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プリーツ加工の種類

プリーツ加工はウール、アセテート、トリアセテート、ポリエステルなど色々な素材に行えます。綿・ポリエステル系・アクリル系などの合成繊維、またそれらを60%以上含む混紡織物には耐久性の高いプリーツ加工が可能で、これに対してシルク・レーヨンなどはプリーツ耐久性が弱く、水にぬれるとヒダが消えてしまいます。また、ウールは50年ほど前にオーストラリア連邦科学産業研究機構 (CSIRO)が開発したシロセット(CSIRO-SET)加工により耐久性の高いプリーツが可能になりました。

プリーツの加工法には、専用の機械で原反のまま2本の熱ローラーの間で生地を挟んでひだをつけながら巻き取るマシーンプリーツ加工、2枚の型紙の間に裁断された生地を挟みスチームで熱を加えるハンドプリーツ加工、アイロンで1本ずつヒダ付けとセットを行なう手加工の3種類があります。

先ほど「通常の3倍以上の布を使う」と書きましたが、どれくらい小さくなるのか比較してみましょう。大きな作業台いっぱいに広げられた黒い布が加工前の生地、中央にちょこんと置かれたのが完成したプリーツシャツです。(クリックで拡大)
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多様化する学生服

一昔前の制服といえば紺色か黒に決まっていました。今では詰襟やセーラー服を制服とする学校は数えるほどしかありません。そのほとんどは柄入りで、仕立てもブレザーが主流です。地色は黒系統〜紺系統〜暖色系とさまざまで、学校ごとに決まった生地があります。当社は学生服用プリーツを年に約4万5千着ほど生産しておりますが、使用する生地は数百種類にもなります。さすがにこれだけの種類は在庫できませんので、シーズンになると小売店様やメーカー様から学校指定の生地を届けていただいております。
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スカートの場合、扇形に生地採りすること、プリーツの分だけ生地が多く必要になることから、この大きさの反物ロール1本でスカートがおよそ30着分にしかなりません。生地を全量ストックするのが無理なことをお分かりいただけるでしょう。
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制服の生産ラッシュは毎年1〜3月です。めでたくご入学された学生さんたちが採寸されて、3月ごろ当社に各サイズ別のオーダーが届きます。サイズもS・M・Lの3種類じゃないんですよ。プロパーサイズとして一番多いのが60〜75サイズ。当然その他のサイズも生産しています。プリーツという特性上、服の完成サイズに合わせた加工をしないとおしゃれな仕上がりになりませんから。さすがにピーク時に全部まとめて加工するのは量的に無理なので、プロパーサイズは他の月に分散して作りだめします。
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その子にとっては憧れの制服ですから、検品は何より重要です。プリーツ加工後ごく稀にわずかなテカリが入ってしまうことがありますが、そういう場合はスチームで起毛して修正します。
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プリーツの幅は学校ごとに1mm単位まで決められているんですよ。納品先で乱れないよう、完成した生地は丁寧にかがり縫いして縫製工場へ送ります。
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第2話は工場見学編です。どうやってプリーツ加工をしているのか実際に工場で見せていただきました。

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ある私立校の制服のオーダーが前年より100着も増えたことがありました。何が起きたんだろうとお聞きしてみると、この年から有名デザイナーに依頼した制服デザインにチェンジしたんだそう。おしゃれな制服に憧れて学校を選ぶんでしょうね。その翌年は近隣のほかの私立校がデザインチェンジ。刺激されてまた別の学校が…。

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取材協力:株式会社 杉本プリーツ

杉本プリーツ(3話)
第1話:寝押しいらずのプリーツスカート(当記事)
第2話:プリーツの作り方を工場見学
第3話:プリーツファッションの世界

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by u-t-r | 2015-07-28 16:00 | 八王子見て歩記

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「直接ご本人に会ってお話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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