八王子見て歩記/ミニ四駆の聖地(前編)

ミニ四駆の聖地(前編)
高尾のミニ四駆専門店、えのもとサーキット
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JR高尾駅北口から徒歩5分。高尾梅郷へ通じる甲州街道(国道20号線)沿いに小さな模型屋さんがありました。店頭の色鮮やかなノボリにタミヤの「ミニ四駆取扱店」、電柱広告(電柱看板)にも誇らしげに「ミニ四駆専門店」、駅から歩いてきた方向には大きな看板で「えのもとサーキット」とあります。そう、ここはマニアの間で「ミニ四駆の聖地」と呼ばれているえのもとサーキット(えのもと玩具店) 様。ミニ四駆といえば、小学生の男の子が遊んでいたモーター付きの模型自動車というイメージしかなかった私に、店主の榎本様が色々教えてくださいました。

30代の間でふたたびのブーム

タミヤからミニ四駆(レーサーミニ四駆)が発売されたのは、今から28年前の昭和61年(1986年)のことでした。車体やモーター、デカール(車体を飾るシール)まで付いて、当時の定価は600円。小学生の小遣いでも買える小型レーシングカーとして生まれます。翌年にはミニ四駆を題材にしたマンガ「ダッシュ!四駆郎」が連載されて人気は急上昇。昭和63年(1988年)夏からとうとうミニ四駆全国選手権大会「ジャパンカップ」が開催されるようになって第一次ブームとなります。

第二次ブームは平成6年(1994年)、マンガ「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」とともにはじまります。ミニ四駆は再び子供達の注目を集め、第一次ブーム世代の引退にともなう世代交代で再び人気が加速しました。タミヤはマシンをチューンナップする公式製品である「グレードアップパーツ」を次々に発売。第一弾はハイパーミニモーターでした。この年、ミニ四駆の累計生産数が1000万キットを突破します。
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2000年代は第三次ブームです。マンガとともに盛り上がった第一次・第二次ブームと異なり、マニアの中心は30代の大人たち。子どものころ買えなかった世代が、社会人になって再び楽しみはじめた静かなうねりです。流行に流されてではなくホビーとしてのミニ四駆が継承されているのを感じますね。お子さん連れも多く、親子二代で熱中するご家族もいらっしゃいます。

ご自身も模型マニア

私自身も中学生のころから模型ボートを楽しんでいました。家が相模湖の近くだったこともあり、時間を見つけてはボートに熱中していたんです。まだラジコンが登場する前で、今のような自由に操縦できるプロポ(比例制御式操縦装置)がなかった時代です。船の舵を少し切った状態で固定して、コースを周回させるというもの。昭和37年(1962年)になると、リード式の操縦機を手に入れてボートを初めて自由に操縦できるようになりました。第一ストアの岡本模型さん、西八王子駅前の小さな模型屋さん、八日町のクラウン模型さん。その頃お世話になっていたお店を思い出します。

私の専門はアウトリガー艇でした。いわゆるモーターボートのようなV型の船体ではなく、滑走面を3か所以上持った水面を飛ぶように滑走する高速艇です。エンジンは60クラス(排気量約10cc)で船体を自作していました。
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芦ノ湖で開催されたRCボート全日本選手権B級では、従来の記録12分55秒40を一気に9分31秒46に縮める新記録を出して優勝。この記録は5年間破られませんでした。他の船が大型エンジン搭載の大型艇だったのに対して私は65クラスでエントリー。作戦が的中して優勝できたことはいい思い出です。息子は親と同じ船を選ばずRCカーの方に行きました。
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二足のわらじから専業へ

最初から模型店を開業したわけではありません。最初はサラリーマンとの二足のわらじでした。30代の頃に会社へ辞表を出したら上司に止められました。それ以来、ほかの人以上に一生懸命働いたものです。その代わりに付き合いゴルフや残業を避ける日々を過ごしていました。仕事が終わった夜中に蔵前の問屋さんまで仕入れに行ったものです。33歳から50代にかけては、京王高尾駅近くの高尾名店街に30坪ほどの店舗を開いていました。
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折しも第一次ミニ四駆ブーム。イベントでもやろうものなら、100人以上の子どもたちが集まり、他のお客様が通りにくいほど混雑してしまいます。ご迷惑をおかけしないよう、別の場所にサーキットを作ったのが今の店のある場所。最初はサーキットのほかには仮設トイレとプレハブの店舗があるだけでした。今の「えのもとサーキット」は店の名前でもあり、同時にサーキットとしてオープンした時の名残でもあります。
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その後、入っていたビルの改装にともなって客層が変化し、今までのように商品が売れなくなってきてしまいました。赤字がかさんで、どうしようかと考えていたところ、ある方から「店舗を他に貸せば賃料が入る。赤字がなくなる分差し引き黒字だろう」とありがたいアドバイスをいただきました。今の店は高尾梅郷のすぐ近く。毎年3月に「高尾梅郷 梅まつり」が開催され、沿道に梅まつりのピンクのノボリがはためきます。
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ミニ四駆のブームに乗って、類似商品が次々に登場した時期がありました。ライバルたちは速さを競うあまり、レース優勝はいつも限られた常連ばかりになり、やがて消えていったのです。タミヤさんはそういう道を選びませんでした。少ないおこづかいでも子どもたちが楽しめるように、一切の改造を禁じたレギュレーション(競争ルール)を定めたレースが今もあります。急がば回れ。ホビーとしての静かなブームを私は歓迎しているんです。

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ある時、タミヤの営業さんに「会長と話してみたい」と話したところ、当の会長様から直接電話がかかってきました。それ以来、ご縁が深まっていき、新製品開発のアドバイスを送ったり、お店が新人営業マンたちの見学コースになったそう。すごい行動力!

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取材協力:ミニ四駆専門店 えのもとサーキット

ミニ四駆の聖地(3話)
→前編「高尾のミニ四駆専門店、えのもとサーキット」(当記事)
→中編「専門店ってどんなものを売っているの?」
→後編「お母さんのためのミニ四駆組立て講座」

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by u-t-r | 2014-04-22 16:00 | 八王子見て歩記

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「現地で直接お話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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