八王子見て歩記/かたくら書店(前編)

かたくら書店(前編)
片倉台住宅団地とシルクナード商店街
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_1459584.jpg

錆が浮いたポールとその下に記載された商店。片倉台住宅団地の「シルクナード商店街」入口にある看板です。今では閉店してしまったお店の名前もそのままになっています。史跡 絹の道を取材した時は奥に見えるバス停から歩いていったものです。あの時からずっと気になっていました。「片倉台」や「シルクナード商店街」をネットで検索しても、ローカルな情報すぎるのかBBS(掲示板)の話題くらいしか見当たりません。この街にはこの商店街にはどんな歴史があったんでしょう。

八王子の住宅団地

昭和30年代(1955年〜)から50年代(〜1984年)にかけて、八王子市内に民間の大規模戸建住宅団地が次々と開発されました。北から順に、宝生寺(26ha)、みつい台(35ha)、清川町(16ha)、富士見町(1団地15ha)、高尾台(16ha)、めじろ台(107ha)、紅葉台(15ha)、絹が丘(49ha)、南陽台(35ha)、北野台(75ha)、そして今回取材に伺った片倉台(54ha)。JR中央線や京王線で新宿まで約40分、東海道新幹線の新横浜駅まで約46分という地の利もあって、多くの人が移り住みました。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_15341433.jpg

新たに開発された住宅団地には、デベロッパーによって当初から商店街の区画が設けられており、買い物の便が計られました。生活に必要な買い物、例えば肉・魚・野菜の生鮮3品やパン屋さん、家電品屋さんなどが団地オープン時には店を構えていたものです。

片倉台バス停からは、京王バスと神奈川中央交通バスが八王子駅南口と北野駅、橋本駅行きが発着しています。JR中央線、JR横浜線、JR相模線、JR八高線、そして京王線へアクセスできる便利な住宅地です。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_23554268.jpg

商店街の看板

「シルクナード商店街」の入口看板を見てみましょう。左の上から順に、東西電業社、ドラッグ片倉台、やなぎ花園、ミツヤ米店、朝日新聞、(有)福家酒販、ホームイング片倉台、鮮魚(有)飯田水産。右は、かたくら書店、リビングショップいづや、お食事みちのく、寝具のつるや、理容エル、ヤマザキパン、ミートショップ木村、リビングショップ江戸や。開業時には合計16店舗あったことが分かります。オープン当時そのままになっている歴史の証人です。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_1674985.jpg

シルクナード商店街の今

平成26年(2014年)現在の俯瞰図で見てみましょう。区画こそ変わりませんが、シルクナード商店街のお店は、水色に塗ったやなぎ花園とかたくら書店の2店舗を除いてすべて入れ替わってしまっています。(クリックで拡大)
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_20165891.jpg

西区画(片倉台小学校寄り)

●保険代理店S&A
西区画の1・2ブロックは保険代理店さんです。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_8254485.jpg

●ノ・パーラ美容室
通路を挟んで3ブロック目は美容室さん。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_8581378.jpg

●ハッピークリーニング
お隣りの4ブロック目はクリーニング屋さん。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_915497.jpg

●けいおう学院-片倉教室
5ブロック目は小中学生向けの学習塾さん。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_984614.jpg

●空家
最後の6ブロック目は空家になっていました。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_911550.jpg

東区画(片倉台自治会館寄り)

●教育会 本校
東区画の1ブロック目。「片倉台」バス停のすぐ隣りは予備校です。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_9243847.jpg

●たちばな薬局 絹の道店
お隣りの2ブロック目は調剤薬局さん。裏側がかたくら書店様になっています。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_9302912.jpg

●空家
3ブロック目は空家です。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_9332278.jpg

●髪切舗 K&M
4ブロック目は床屋さん。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_9374471.jpg

●やなぎ花園
5ブロック目はオープン当時の商店で唯一現役で残っているお花屋さん。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_9454686.jpg

●空家
花屋さんの隣りの6ブロック目は空家になっていました。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_9481046.jpg

●五建工業
通路を挟んで7ブロック目は、法面保護工事や緑化工事の建設会社さん。本社は子安町だそう。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_9575528.jpg

●キネシオ整骨院
8ブロック目はカイロプラクティックの整骨院さん。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_102822.jpg

●空家
東区画最後の9ブロック目は空家でした。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_1061930.jpg

片倉台とのご縁

片倉台の開発第一期は昭和46年(1971年)ころ。JR片倉駅寄りの低地からはじまり、二期〜三期と開発が進むにつれて人口が増えていきました。当時は都心に通うサラリーマンが購入の中心で、大企業勤めゆえ転勤族が多かった記憶があります。片倉駅から横浜線に乗って新横浜まで出る、新横浜駅から新幹線で関西方面へ出張するのに便利な土地柄もあったのでしょうね。住宅協定があって、指定された場所以外にはマンションや店舗を建設することは許されませんでした。片倉台は高級住宅地として有名だったのです

私ども地元の不動産会社にとっては、学生さんの貸間や一戸建ての貸家というご縁が多い場所でした。おばあちゃんが賄い付きの貸間をやって、近くの工科大生を下宿させていたものです。賄い付き貸間の相場は4万5千円前後。貸家賃貸は12万円くらいで、ピーク時には15万円くらいでしたっけ。高台にあるので「強風でアンテナが倒れた」というクレームをお受けしたり、風呂や給湯器が壊れた時に「自分で直すんですか?」とのお問い合せをいただくこともありました。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_10364629.jpg

八王子便箋

ひょんなご縁になったのは、北野の整骨院で見た「八王子便箋」でした。絹の道や八王子の野の花などが描かれたイラスト付きのかわいらしい便箋です。シリーズになっていて全部で7種類があるそう。他にも八王子車人形の手描き線描入りの一筆箋や絵はがきなども置かれていました。この商品を作られているのが、シルクナード商店街のかたくら書店様でした。
八王子見て歩記/かたくら書店(前編)_b0123486_1015517.jpg

お電話さしあげたところ、当時のお話しをうかがえることになりました。ネット上には残っていない片倉台の開発当初の暮らし。いったいどんなだったのでしょう。

-----------------------------------------------------------------------------------------------

地元で取材する時、いつも困ってしまうのが庶民の暮らしの記録がほとんど残っていないことです。今回の片倉台も、開発当時の写真や人々のようすを知るための写真や資料が入手できず、シルクナード商店街から去っていったお店がその後どこへ行ったのかも追跡できずじまい。皆様のお手元にある街の写真って大変貴重な歴史資料なんです。

-----------------------------------------------------------------------------------------------
取材協力:かたくら書店(片倉台シルクナード商店街)

かたくら書店(2話)
→かたくら書店(前編)「片倉台住宅団地とシルクナード商店街」(当記事)
→かたくら書店(後編)「小学校がすぐいっぱいに」

ブログランキング・にほんブログ村へ

by u-t-r | 2014-03-11 16:00 | 八王子見て歩記

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「現地で直接お話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


by UTR不動産
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31