八王子の公園/椚田遺跡公園(後編)

八王子の公園-第6話(後編)
椚田(くぬぎだ)遺跡公園/八王子市椚田町
縄文時代の住居跡
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椚田遺跡の発掘調査は昭和50年(1975年)に開始され、5月から翌年1月までの約8か月間、のべ14,000人を動員して行われました。これでも遺跡全体の8分の1を精査したに過ぎませんでした。調査団の予想をはるかに上まわる三時代にかかる集落、ことに縄文時代中期中葉に属する重複した住居址群と、膨大な遺物が確認されたからです。学問的にたいへん貴重な価値を持ち、遺跡の保存状態もまた良好なものでした。そこで調査団は、継続して発掘調査を行うよりも、公有化による現状保存が最良の方法であると判断し、調査会に保存要望書を提出しました。

区画整理事業にとって、途中で計画変更することは大変むずかしい問題です。しかし、区画整理側でも多大な努力がなされ、保存計画案が策定されました。それは、公園用地を集め、さらに民有地の買収部分を加えた11,046m2を史跡公園として保存するというものです。保存には、遺跡の上に盛り土をして遺構を保護する方法が選ばれました。こうして、椚田第Ⅲ遺跡は椚田遺跡公園として国指定の史跡となり、後世に残されることになったのです。

入口モニュメントと公園レイアウト

椚田遺跡公園は市立椚田小学校のある道路沿いです。
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横断歩道を渡ると、公園の正面入口。
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縄文土器をイメージしたゲートとモニュメントがお出迎えです。ゲートの文様は発掘された土器のものを使っているそうです。
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大きな縄文土器が3つ。実際に発掘された土器を大きなモニュメントにしました。郷土資料館にモデルになった土器の実物が収蔵されています。
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郷土取材に行った時期に資料館で展示されていた椚田遺跡の縄文時代中期の小型土器です。まるで女の子のおままごとに使う小さな食器のよう。モニュメントとよく似ていますよね。
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園内中央の芝生広場の下に縄文時代の住居跡が眠っています。左奥が発掘された住居跡から型をとってプラスチックで再現した「住居跡の広場」です。右側に「縄文の草地」と「縄文の林」。そのころ生えていたと想像されている樹木が植えられています。いずれも木の実が採れ、薪になり、道具にもなった広葉樹です。(クリックで拡大)
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集合広場とトイレ

入口すぐ右側の「集合広場」に解説板があります。椚田遺跡発掘のようすや出土した縄文土器、石器などが詳しく解説されています。奥に見える小屋はトイレ。
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トイレは一段高い場所です。下に眠る遺跡を傷つけないためこうなりました。
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説明板「史跡 椚田遺跡」。(クリックで拡大)
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説明板「縄文時代のくらし」。(クリックで拡大)
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説明板「縄文時代の道具」。(クリックで拡大)
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縄文の林と縄文の草地

集合広場の横が「縄文の林」になっています。遺跡から発見された草木の種類から当時の林を再現させた林です。当時の貝塚や集落遺跡の調査から、縄文時代は基本的に食物採集の文化であったと考えられています。縄文人たちは採集した食物を食べ、余ったものは穴や屋根裏に貯蔵して、必要に応じて取り出していました。貯蔵されていた食物はクルミ、クリ、トチ、ドングリなどの実が中心であることから、主食はこれら堅果類であったと推測されます。なかでもドングリ類の比重が高かったそう。製粉した上でクッキーのように焼き上げて食べたり、粥や雑炊にしたりして食べていたのです。
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芝生広場

「縄文の林」の隣が「芝生広場」です。村の跡があったのはこのあたり一面。狩りはいつも成功するわけではありません。女性や子どもでも簡単に採れるドングリの実や、魚、海なら貝類が重要な栄養源でした。住居の近くでドングリを集めることも多かったのでしょうね。
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芝生広場の下にご先祖さまたちが暮らしていた村がありました。
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住居跡の広場

芝生広場の横に「住居跡の広場」。発掘された住居跡3軒をプラスチックで型取りして再現してあります。遺跡と全く同じ場所に設置したそう。柱の跡、炉の跡、敷石の跡、縄文人たちの息吹が感じられる展示です。
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説明板「竪穴住居と敷石住居」
「ここに展示した3軒の家の跡は、椚田遺跡で発見された竪穴住居と敷石住居の代表的な例です。床には屋根を支えるための柱の穴があり、中央には炉も作られています。うち1軒が床に石が敷いてある敷石住居です。出入り口に使われた張り出し部をもっているのが特徴で、縄文時代中期の終わり頃から作られるようになりました。」
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円形の住居跡。地面に底の平らな穴(竪穴)を掘り,屋根を付けた竪穴住居です。縄文時代の住居でほとんどの方がイメージするのはこのかたちでしょう。中心に太めの柱跡が1つ、まわりを取り囲むように柱跡が5つありました。
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柱跡からみて、柱の太さは20cm以上あったようです。石斧で切り倒すのはさぞ大変だったことでしょう。
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こちらの竪穴住居は隅の丸い四角形をしています。
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3軒の中で一番大きく柱の数も多い住居跡です。家族の数によって、家の大きさを変えていたんでしょうか。中心部のくぼみは柱跡なのか、炉跡なのかはっきり分かりません。
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張り出し部を持った敷石住宅跡。円い住居部分に張り出した出入り口が付いていて、その形が柄鏡(えかがみ)に似ているところから、柄鏡形(えかがみ)敷石住居と呼ばれています。敷石住宅はその名のとおり、住居跡の床面に平らで大きな石を敷き詰めた構造です。このような形態の住居は縄文時代中期〜後期に見られます。
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家の中央部に石組みの炉を構えています。ここで煮炊きしたんでしょうね。炉を拳大(こぶしだい)の石で囲ってあり、発掘当時そのままの姿です。
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張り出し部は家の入口です。
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芝生の丘

「住居跡の広場」の奥がちょっぴり高くなっています。ここが「芝生の丘」。上から縄文の森や住居跡が見渡せます。郷土資料館の方にお聞きしたら、トイレの排水施設が丘の下に置かれているそうです。遺跡の上ゆえ地下を掘れないゆえの工夫でした。
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交通アクセス・開園時間

所在地 :八王子市椚田町541
アクセス:京王線「めじろ台駅」から徒歩11分
駐車場:ありません
公開時間 :いつでも入れます。ただし、夜間はお気をつけください。

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縄文の森には樹液を求めるコガネムシが何匹もいました。男の子なら大喜びしそう。
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取材協力:八王子市郷土資料館

椚田遺跡公園(全2話)
→第6話(前編):椚田遺跡公園「椚田遺跡の発掘調査記録」
→第6話(後編):椚田遺跡公園「縄文時代の住居跡」(当記事)
中田遺跡公園(全2話)
→中田遺跡公園(前編)|「中田遺跡の発掘調査記録」
→中田遺跡公園(後編)|「古墳時代後期の竪穴住居を復元」

→八王子の公園|記事一覧

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by u-t-r | 2013-09-24 16:00 | 八王子の公園

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「現地で直接お話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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