八王子見て歩記/市立保育園(前編)

元気な園児たちに囲まれて(前編)
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未就学児を預ける施設といえば、保育園と幼稚園がまず思い浮かびます。3歳未満の子でも夕方まで預かってくれるのが保育園、4歳児以上限定で昼間だけの幼稚園というイメージが強いのではないでしょうか。平成20年(2008年)の幼稚園教育要領改訂にともない,幼稚園でも預かり保育を教育活動の一環として実施するようになりました。その一方、幼児教育に力を入れる保育園も増えており、両者の差はどんどん縮まっています。

今回は、働くお母さんの心強い味方=保育園が今どうなっているかを取材するために、八王子市内の市立保育園へ伺いました。

ドイツ生まれの幼稚園
幼稚園と保育園、この2つは役所の管轄が違うことをご存知でしょうか。幼稚園は文部科学省、保育園は厚生労働省です。幼稚園は19世紀前半に活躍したドイツの幼児教育者、フリードリヒ・フレーベルが小学校入学前の幼児のために1840年に設立した学校Kindergartenが始まり。彼の作った学校の名前が「幼稚園」の由来でした。Kindergarten(ドイツ語)→kindergarden(英語)→「幼稚園」と翻訳されていったわけです。一方の保育園は働くお母さんの子どもを預かる託児所が発祥です。

文部科学省が私立幼稚園に「預かり保育推進事業」の私学助成措置をとったのは、平成9年度(1997年)のこと。平成14年度(2002年)から、教育時間終了後等に「預かり保育」を行う私立幼稚園に助成を実施する都道府県に助成額の1/2を国が補助するようになり、平成20年度には34億7千5百万円を計上しています。

託児所から始まった保育園
わが国の日本人による保育事業は、明治23年( 1890年)6月、赤沢鍾美・ナカ夫妻が家塾、新潟静修学校の付属施設として開設した託児所が始まりです。明治27年(1894年)には、大日本紡績の東京深川工場に母親が就労することにともなう附設託児所が創設され、続いて明治29年(1896年)、福岡県に三井炭坑託児所が設立されました。明治37年(1904年)になると、日露戦争に出征し戦死した軍人の遺家族のために、母親が就労している間幼児を預かる出征軍人児童保管所が神戸に開設されました。

大正時代には工場で働く女性のための乳児保育所が誕生します。最初の公立託児所は大正8年(1919年)大阪市に開設され、次いで大正9年(1920年)年には京都市に、翌年(1921年)には東京市にも開設されます。

昭和13年(1938年)に厚生省が設置されると、託児所は厚生省の所管となります。戦後の昭和22年(1947年)12月、児童福祉法を公布。託児所の名称は「保育所」に統一され、児童福祉施設の一つとして位置づけられるようになりました。
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教育計画
保育園といえば「楽しくお遊戯」のイメージがあるかもしれませんね。確かに昭和23年(1948年)、当時の文部省が発行した「保育要領─幼児教育の手びき─」では、保育の内容を「楽しい幼児の経験である」、「一日の生活は自由遊びが主体となる」としています。でもね、保育12項目にはこうも書かれているのですよ。「1見学、2リズム、3休息、4自由遊び、5音楽、6お話、7絵画、8製作、9自然観察、10ごっこ遊び・劇遊び・人形芝居、11健康保育、12年中行事」。

私たち保育士は教育計画をきちんと立てて子どもたちを指導しています。まず、毎年春先に厚生労働省や八王子市から幼児指導の指針が園に送られてきます。その指針を元に年間計画を立て、月案、週案、日案と具体的に落としていって、日々のスケジュールが決まります。ですから、子どもたちと一緒に公園に行っても漫然と遊んでいるわけではなく、ある時は自然観察、ある時は体力向上とちゃんとした目的があるのです。
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散歩で歩く途中に抱き上げをせがまれても、それに応じるということはしません。私たちは「おばあちゃんの子守り」と呼んでいますが、甘やかすだけでルールを守らせないようでは教育が成り立たないからです。「まんま」や「ぶーぶ」、「ないないする」などの幼児語も使いません。小さい頃から正しい言葉づかいをさせることが、何より重要だと考えているのです。月曜日には4〜5歳児を対象に平仮名の読み書きを教えています。水曜日は3〜5歳児に親と子のふれあいを目的としたリトミック体操を、木曜日は4〜5歳児にニュージーランド出身の先生による英語教室です。
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食育
園の食事は1日3回、朝のおやつ・昼食・3時のおやつですね。育ち盛りの子どもたちですから調理にも気をつかいます。食事は体の栄養のみならず心の栄養でもあります。食べたいものを食べさせればいいわけではないのです。食事もおやつも全部手作り、栄養士と管理栄養士の2人が日に3回調理しています。

朝のおやつは、お腹に溜まらない軽い食べ物。主に咀嚼力をつけるために、煮干しやスルメ、スティック野菜に乾パンといったアゴの力が必要な食事を出します。飲み込めなくてもいいんです。口でモシャモシャ噛んでるだけで咀嚼力が自然とついていきますから。

お昼は、1〜2歳児が11時、3〜5歳児が12時です。献立は栄養士さんが献立案を作り、園長がまず内容をチェックします。次にスタッフ全員参加で献立会議。先生からの報告、園児たちの食べ具合や嗜好に合っているかを2週間ごとに話し合います。例えば、「あまり食が進まなかった」「暑い時期に熱いものが出た」などの反省を次の献立に活かしていきます。

3時のおやつは、育ち盛りの食欲を満たすために、おにぎりやうどん、チャーハンなど、より食事に近いものを出します。甘いものを出す日は半分もありません。
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園児たちのアンケートで作るリクエストメニューもありますよ。鶏の唐揚げが不動の一番人気。他には、煮込みハンバーグ、かぼちゃのコロッケ、きんぴらごぼう、人参のタラコあえなどが人気筋。不思議なことに3歳児は煮物が好きな子が多いですね。意外な人気が納豆の野菜炒め。納豆をよく炒めて小松菜などの野菜とからめます。このメニューを作りはじめると、園内から歓声があがります。納豆を炒めると匂いがするんですよ。子どもたちにもすぐ分かっちゃう。

園庭では子どもたちと一緒に季節の野菜を育てているんですよ。収穫した野菜は給食に出します。自分たちが世話した野菜が育っていくさまを見て、苦手だったトマトを克服できた子もいました。子どもに調理をさせる調理保育(実習)も各年齢に応じて取り組んでいます。3歳児クラスの十五夜お団子作りでは「1番に起きるんだから!」と話しながらスヤスヤお昼寝に入っていました。起きるといつもより早く支度を終わらせ、やる気満々!!自分達の手で丸め、「お月様みたいに丸くなるかな」と出来上がりを期待しながら作っていました。
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にこにこ広場と園庭開放
市内の保育園では、保護者とお子さんに保育園を体験していただく試みをやっています。入園前に一度参加されてはいかがでしょう。各園の入口に八王子市こども家庭部子育て支援課発行の広報誌「あっぷるちゃん」を掲示しているので、各月のスケジュールをご確認ください。子育て相談はご連絡いただければ、いつでも保育士、栄養士等が相談に応じています。

「にこにこ広場」は、毎月第3火曜日の午前10時〜11時30分に開催。「園庭開放」は、月曜日~金曜日の午前10時〜11時30分。どちらも0才~5才のお子様と保護者(ご家族の方の参加も自由)が無料で参加できます。屋外で行う関係上、雨天中止とさせていただいております。お楽しみ給食の試食は要予約ですが実費でできます。(子ども200円、大人300円)
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保育園入園の流れ
毎年の園児募集は以下のような流れになっています。

1.入園可能数の問合せ
八王子市役所から園に、何歳の子が何人入れるかの問合せFAXが入ります。園の側の回答が揃う頃、毎年12月初旬に入園希望者を募ります。

2.市役所に入園申し込み
必要書類に第4〜6志望までの園名を記入します。

3.書類選考
母子家庭、共稼ぎで同居人なしなど要件の高い順に入園希望者を選考します。

4.当選
3月1日まで市役所は決定か辞退の連絡を待ちます。

5.各保育園に入園者リストをFAX送信
保護者へ入園の可否を電話か郵送にて連絡します。

6.入園
毎年4月15日に職員会議、5月1日に入園。
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保育園の先生方が心を痛めているのは待機児童の問題です。保育事情2010で取材したように、ここ八王子市では入園希望者が保育園の定員を上回る状態が続いています。見学に来るお母さんの中に「直接申し込めばあるいは」と考えられる方がいらっしゃるのも無理ないこと。

大変残念ですが、入園申し込みは八王子市が一括して管理しています。市の側も毎月保育園に電話連絡をして「空きはありませんか?」と問合せてくるそう。お互い、そう簡単に空きが出ないことを分かっている同士。「ありません」と答えるのが切ないとおっしゃる園長先生でした。

後編では保育園の中を見学させていただきました。可愛い園児たちの毎日をご覧ください。

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→後編へ続く

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by u-t-r | 2010-11-09 16:02 | 八王子見て歩記

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「現地で直接お話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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