八王子見て歩記/三角屋根

七連の三角屋根

窓を全部北側に寄せた片流れ屋根。
三角屋根が連なった様から「のこぎり屋根」という呼び名も。
かつて、いろいろな工場によく使われていたデザインです。
八王子っ子は、三角屋根といえば機織工場を思い浮かべます。

このデザインの工場が生まれたのは、産業革命期の1820年代。
イギリスヨークシャー地方の織布工場が発祥です。
我が国では明治時代に主要輸出品であった繊維産業で採用される事になります。
昭和末期まで八王子に数多くあった機織工場もそうでした。
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今では地元でもめっきり少なくなった、この三角屋根。
奇跡的に往時の姿をそのまま残している機織工場がありました。
中野上町の大竹絹織様です。
七連の三角屋根は、国内でも最大級とのこと。
会長様にお願いして、工場内部を見学させていただきました。

三角屋根の工場は北側に窓を集中させて建てられています。
これは織物に大敵の直射日光を遮り、間接光だけ内部に採り入れる工夫。
高い平屋造りにしたのは、熱気がこもらず自然換気も図れるためとか。
そのおかげで工場内部は目にも柔らかな間接光に包まれ、昼間は照明いらず。
外の暑さも感じさせません。
今流行りの省エネを100年以上も前から実現していたのですね。
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工場の中は基本的に建築当時のままで保存しているそうです。
現役で使用中の2棟こそ窓にアルミサッシを入れてありますが、
一番奥の建物に入ったとたん昭和時代にタイムスリップしたよう。
今では懐かしい碍子(がいし:陶器製の絶縁体)や、レトロなヒューズボックス。
天井を走るシャフトと布製プーリー。20馬力の大きなモーター。
最盛期には132人の女子工員さん達が働いていた場所です。

大平洋戦争は、この工場にも大きな影を落としました。
戦時体勢下の政府は、空襲の危険性が少ない地域、
八王子、諏訪、山形などに軍需工場を疎開させていきます。
この工場でも生産ラインを機織から潜望鏡のレンズ製造に切り替えました。
手先が器用で目もいい女子工員さん達は、新しい仕事にもすぐ慣れ、
優れたレンズを生み出していきました。
戦後、諏訪は時計で有名な諏訪精工舎など精密機械工業が残りましたが、
八王子は戦前と同じ繊維産業へと戻っていきます。

今では小学校の社会科見学のコースになった三角屋根。
正門入ってすぐ左にあるのがアンテナショップ「はぎれの店」です。
正真正銘国内産のスカーフや高級オーダーカーテンを取り扱っています。
肌触りもよくしっかりした品質は国産ならではですね。
しかもリーズナブルな価格。なにせ工場がすぐ隣なんですから。
店のカウンターには、小学生達のかわいい字で寄せ書きが貼られていました。
工場見学した子ども達が、後で送ってくれたものだそう。
いつまでもふるさと八王子の歴史を伝えてくれたらなと思いました。
●はぎれの店(Tel.042-625-5084)
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もし八王子で迷子になったら思い出してください。
三角屋根の工場は、窓が付いてる方が北で〜す。
屋根側(南側)に歩いていけばJR八王子駅にたどり着けます。
間違えて窓側(北側)に歩くと中央高速方面なので、ご注意を。

取材協力:大竹絹織株式会社(八王子市中野上町1-26-3 Tel.042-622-8111)
by u-t-r | 2008-07-15 06:56 | 八王子見て歩記

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「現地で直接お話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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