八王子見て歩記/乾物

八王子と乾物の関係

皆さんは覚えておいででしょうか。
1999年以前、JR八王子駅の北口ロータリーには噴水があり、
「織物のまち八王子」と書かれた、ロウソクのようなオブジェが建っていました。
今は織物をイメージ化したオブジェ「絹の舞」がある場所です。
どちらも八王子と織物との深い関係を表わしています。

八王子は江戸中期頃から繊維産業の街として有名です。
ついこの間まで、周辺地域には多くの桑畑と養蚕農家があり、
市内にも三角屋根の機織工場が建ち並んでいたものです。
街は近隣の県から働きにやってきた女子工員さん達で賑わっていました。
当時のお話しを八幡町の乾物屋さんに伺ってみました。
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市内で働く女子工員さん達の多くは、海のない山梨県出身だったそうです。
まだレトルト食品や冷凍食品がなかった時代、
彼女達は、休みになると海産物の乾物を持って実家に帰っていきました。
盆暮れの時期にはそれこそ飛ぶように売れたとのこと。

乾物は養蚕農家にとってもなじみ深い食品です。
桑の葉がある5月から9月はカイコの飼育時期。
農家の方たちは買い物する時間さえ惜しみ、乾物をまとめ買いして備えました。
長期間保存が利き、夏場の猛暑でも傷まない乾物品は貴重な蛋白源だったのです。
繊維の街・八王子を栄養面でささえていたのが乾物だったというわけです。
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お店で売れ筋の乾物品を並べていただいて写真を撮ってみました。
高野豆腐、切干し大根、塩昆布、芽ひじき、炊き込みひじき、ちりめんじゃこ、金時豆。
今でこそ、調理する人は少なくなってしまいましたが、乾物はスローフードの原点。
ともすれば不足しがちな繊維質などを補える日本の伝統食品です。
乾物品は一般に「腕2、道具2、素材6」といわれているそうですよ。
素材が6です。元々が生で食べてもおいしいものを保存食品にするんですね。
最近は乾物のもどし方や調理法をご存じない方も増えていることでしょう。
見た目と完成したお料理が、これほど変わる食品も珍しいと思います。
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上の乾物品から奥様に実際に作っていただいたのが、写真のお料理です。
調理したらここまで変わると想像つきましたか?
店頭ではこうした乾物料理の手作りレシピを何種類も配布されているそうです。
いただいて帰った1枚を見ると、4種類のお料理が紹介されていました、
貝ひもの煮方、刻み昆布サラダ、芽ひじきのサラダ、塩昆布と野菜の和えもの。
う〜〜ん。。どれも想像しただけでおいしそう。
私は、このお店の「炊き込みひじき」が大のお気に入り♪
研いだお米に入れて炊くだけで、炊き込みご飯が簡単に作れて重宝しています。

女子工員さんで賑わっていた同じ街角を、今は学生さんが歩いています。
機織工場はいつの間にかマンションに建て替えられていきました。
人は代わり街は変わっても、あちこちにひっそりと歴史が息づいています。
今度の休みに、わが街八王子を散策してみませんか?

取材協力:新藤鰹節店(八王子市八幡町6-10 Tel.0426-22-1534)
by u-t-r | 2008-05-27 23:32 | 八王子見て歩記

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「現地で直接お話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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