八王子見て歩記/下原刀

下原刀(したはらとう)

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端午の節句にちなんだ宝物を、オーナー様に見せていただきました。
立派な鎧兜と菖蒲、右側に何やら日本刀が一振り。
全部本物です!
実はこの日本刀、武州下原刀という地元八王子で作られた刀なんです。
八王子にも高名な刀鍛冶さんたちがいたんですねー。
資料をお預かりしたので、鑑定番組風に書いてみました。

♪ BGM♪

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武州下原刀(ぶしゅう したはらとう)。
武州とは武蔵の国を指し、
下原は、現在の八王子市内の下恩方、横川、元八王子近辺にあたる。
永正年間頃。当地で山本姓を名乗る下原鍛冶達が
下原刀は室町末期から江戸末期にかけて彼らが作刀した日本刀である。
当初は領主大石氏の招きに応じ、移り住んだ刀工たちであるが、
下って戦国時代、武州は北条氏照の支配下にあった。
北条氏の庇護を受け、刀工たちは数々の名刀を鍛えていった。
一族の中には北条氏から一字を貰い受け、康重、照重を名乗った者もいる。

徳川家も、関ヶ原、大阪夏の陣に武器を供給した下原鍛冶を厚く庇護した。
江戸時代以降、下原鍛冶一門は苗字帯刀麻裃の着用を許され、繁栄を謳歌する。
中には、水戸黄門で有名な水戸光圀から一字を賜った刀工もいる。
宗國、安國である。
特に武蔵太郎安國は、その語呂のよさから人気があり、
中里介山の小説「大菩薩峠」の中にも出てくる人気刀工である。
一族は宗家、本家、分家で十家にもおよび、「下原十家」などと言われた。
有名な刀工は、周重、康重、照重、照廣、正重、廣重、宗國、安國、國重、利長など。
彼らは江戸時代末期まで脈々と伝統の技を伝えていったのである。

実戦のための日本刀として知られる下原刀は、
折れず、曲らず、良く切れ、さらに、刃こぼれしないという、
日本刀本来の武器としての性能を見事に具現化している。
これが室町以来変わらず武家の支持を受け続けた理由である。

作風は、慶長時代を境として、以前を古刀、以後を新刀と分ける。
形状は刀では本造り、脇差では平造り。彫り物も得意としている。
重ねはおおむね厚めである。
刃文は、皆焼(したつら)、互の目(ぐのめ)乱れ、そして直刃(すぐは)が見られる。
下原刀の多くは、区上(まちうえ)に水影が見られる。
現存する下原刀の内、計89点が八王子市指定文化財に登録されている。
残存数も少なく、非常に貴重な文化遺産となっている。

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下世話な話しですけど、下原刀っていくらくらいするんでしょうね。
専門家に聞くと、一般的に刀、短刀、脇差、槍、なぎなたと段々値段が下がり、
品物(刀の出来)によっても、また1本1本違ってくるそうです。
刀身彫刻のあるよい下原刀はかなり高価ですが、安いものでは20〜30万円から、
高いものでは何百万円もするものがあるとか。
私なんかじゃちょっと手が届かない芸術品なんですね。

ちなみにお話しを聞かせていただいた苅田刀剣さんは、
日本刀の専門家でもいらっしゃいますが、
本来は刀剣研ぎ師で、刀の研ぎに重点をおかれているお店です。
もし下原刀を入手したいのであれば、信用のおける刀屋さんから取り寄せる事をお薦めするそうです。

取材協力:苅田美術刀剣店Facebook
by u-t-r | 2008-05-04 23:45 | 八王子見て歩記

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「現地で直接お話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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