八王子の公園/中田遺跡公園(後編)

八王子の公園-第7話(後編)
中田遺跡公園/八王子市中野山王
古墳時代後期の竪穴住居を復元
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_1424327.jpg

発掘調査が終わった中田遺跡は公園となりました。遺跡公園内に保存されている住居址は4軒あり、すべて古墳時代後期の6世紀に属するものです。このうち、上屋を復元した住居址は竪穴床面積84m2(9.1m×9.2m)。残り3軒の住居址は調査後に砂を入れ、さらに真土を埋め戻して芝を張って保存しました。保存住居址は大きさや柱穴の位置が分かるよう川原石と丸太などで示してあります。それぞれの大きさは、11.5m×11.7m(135m2)、9.4m×9.4m(88m2)、9.2m×9.1m(84m2)でした。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_1518060.jpg

古代の集落と現代の団地と

中田遺跡公園がユニークなのは、古代の集落跡と現代の団地が並んでいることです。川口川と都営中野団地に挟まれるようにして復元した竪穴住居のある公園です。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_2155356.jpg

八王子駅からバスで12分。「遺跡公園」バス停のまん前が公園入口です。ブランコやすべり台が見えますね。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_15265529.jpg

Google Mapで公園を真上から見るとこんな感じ。ブランコの前がバス停。中央でフェンスに囲まれているのが復元された古墳時代後期の竪穴住居です。(クリックで拡大)
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_21333798.jpg

復元住居の見学

見学申し込みは管理事務所で当日に受け付けていただけます。管理事務所の場所はバス停よりちょっと八王子駅側です。団体の場合は事前申し込みが必要です。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_15374719.jpg

所定の申込書に記入の上、管理人さんがフェンスの鍵を開けて案内してくれます。公開時間は午前9時~午後4時。非公開日は月曜日と年末年始です。ただし、月曜日が祝日の時は公開しています。(翌日の火曜日がお休みとなります)
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_15421677.jpg

復元住居は二重のフェンスに囲まれています。まず外周フェンスを開けていただき、復元住居1軒と4軒の住居址がある敷地内に入ります。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_15581725.jpg

外周敷地内には遊歩道があって、ところどころにベンチが置いてあるものの、草ボウボウという感じ。この日は管理人さんが一生懸命に草刈りをしていましたが、間に合わないんでしょうねぇ。夏場の雑草は刈っても刈ってもすぐ伸びてくるし。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_164274.jpg

フェンス越しに茅葺き屋根が見えてきました。これが復元された古墳時代後期の竪穴住居です。意外に大きいのにびっくりしました。建物面積84m2といえば、現代の一戸建住宅と同じくらいの大きさです。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_1685341.jpg

説明板がありました。(クリックで拡大)

住居址

中田遺跡で発見された住居址は一四二軒で、縄文時代中期より平安時代(今からおよそ四千五百年前から千百年くらいまで)にわたっている。
住居址の規模は、時期によって変遷するが、この中で古墳時代後期のものは、他にくらべて大形のものがある。また、古墳時代後期から奈良時代にかけての住居址には、四本から八本の柱穴がみられる。住居址は、北壁側に粘土で築いた「かまど」を持ち、その付近からまとまって生活用品(土器・石器)が出土している。
この保存住居は、古墳時代中期鬼高期(西暦六世紀頃)の住居址に玉砂利、砂を入れ、その上を真土で埋め、住居址の位置を標示するため、地表に河原石をならべ、中に芝を張って発見当時の遺跡を保存しながら、見学できるようにしてあります。

昭和五十四年十一月三十日
八王子市教育委員会

八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_1636436.jpg

縄文竪穴住居へ

内周フェンスを管理人さんに開けてもらって、間近で竪穴住居を見学します。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_16423052.jpg

外観は窓がなく、屋根のてっぺんが換気口になっています。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_2261086.jpg

地面を掘って家を建てる竪穴住居の建て方では、当然深さに比例した排土が出ます。この排土は住居の周りを堤状に巡らす周堤(しゅうてい)の材料として活用されていました。周堤には、流入する雨水を遮断する働きとともに、家周囲の嵩上げによって建材を節約できる利点があり、室内は天井を高くすることができました。草で埋もれちゃってよく見えませんね。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_2215388.jpg

室内側です。地面よりやや高くなっているのが周堤です。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_22213757.jpg

竪穴住居はこんな構造になっています。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_22254737.jpg

入口には雨が室内に降り込まないよう、三角の屋根がついていました。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_21101814.jpg

部材と部材とは荒縄でしばって固定しています。まだ金属がない時代だったので釘なしで家を建てていました。どこか飛騨高山の合掌造りにも似ています。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_21242188.jpg

竪穴住居は地面を掘り下げて床面をつくるので、入口が斜路になっています。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_21155041.jpg

玄関扉の上に換気口です。室内で薪を使って煮炊きすると大量に煙が発生します。風通しをよくする必要があったでしょうね。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_21281872.jpg

残念ながら老朽化して危険なので室内には入れません。初期住居址の竃(かまど)の位置は北西側ほぼ中央の壁の直下です。幅10cm・深さ15cmほどのU字溝を掘って馬蹄形に作られていました。最初、家の中にすっぽり収まっていた竃は、後期になるにつれて少しずつ室外へ張り出して作られるようになり、やがて焚き口をのぞいてすべて室外になりました。位置も壁の中央から隅に移動していきました。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_21384068.jpg

部屋の上にスノコ状の床がありました。囲炉裏からの煙が上へ上へと上り、家全体が防虫加工みたいになるのでしょう。獲った魚や動物の肉を置いておくだけで薫製ができたはずです。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_21452637.jpg

竪穴住居は柱で梁を支えて垂木を掛ける構造です。いわば、屋根だけで家を造るような感じ。発掘時の記録によると、柱に囲まれた中側や竃(かまど)の前面は固く締まったはっきりした床であることが多く、柱の外側は黒色土が敷かれていたようにみえたそう。このことから、なにかを敷いて寝るための場所であったと想像されています。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_2159055.jpg

家の裏側にも換気口がついていました。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_8283016.jpg

八王子の古代住居址のほとんどは水辺で発見されています。この復元住居のすぐ近くにも川口川が流れていました。水辺の近くに住まいを構えれば、飲み水も川魚もすぐ手に入るので住みやすかったのでしょうね。今でも私たち日本人の心の底には、湖や渓流などの水辺を好むDNAが流れているように思います。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_842330.jpg

外周遊歩道と遊具

管理人さんにお礼を言って、復元住居を退出しました。今度は外周遊歩道沿いに公園を一周してみます。遺跡を取り囲むように立派な舗装路。かつてここには信号機や踏切などがあり、交通公園とも呼ばれていました。今でも東浅川交通公園と清川交通遊園の2か所は現役で、交通安全教室が開かれています。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_854342.jpg

管理事務所のすぐ近くにかわいいプールがありました。小さい子向けのじゃぶじゃぶ池といった感じ。今は使われていないようです。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_941576.jpg

プールの隣にブランコです。ご存知!公園三種の神器のひとつ。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_974795.jpg

ブランコに乗ったら次はすべり台でしょう。どこか懐かしい昭和レトロなデザインです。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_9112514.jpg

道路標示はあるものの、自動車は園内に入れません。交通公園だったころの名残りでしょうね。左方向が本線です。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_9183237.jpg

ここから道がカーブしていきます。左手は復元住居、右が川口川です。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_9235568.jpg

生け垣越しに復元住居が見えます。フェンスがあるので見学を諦めてしまう人が多いんじゃないでしょうか。管理事務所に当日申し込めば、簡単に中に入れてもらえるんですよ。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_9263071.jpg

木陰で遊ぶ少女たち。地元に住んでいると気がつきにくいですが、八王子市は東京都最多の公園数を持ち、ひとりあたり公園面積が11.58m2もある公園の多い街なんです。危険な道路で遊ばずにすむ、子どもにやさしい街だと思います。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_9332476.jpg

広々した芝生広場が広がっていました。電線がないのでタコ揚げも楽しめます。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_9414392.jpg

芝生広場の片隅、外周遊歩道沿いにトイレがあります。管理事務所の張り紙によると、老朽化のため平成26年2月7日完成予定で建て直すそうです。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_9472031.jpg

らくらく健康器具

芝生広場に健康器具が4種類設置されていました。朝のウォーキングついでに公園に寄ってストレッチ。健康によさそうです。最初は「背のばしベンチ」。「すわりながら、また反対側に立ってゆっくりと背のばし運動をしましょう。無理なく背すじが伸ばせます」。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_1001325.jpg

次は「ぶらぶらストレッチ」です。「ぶら下がって腕・肩・背すじのストレッチ。手・腕・脚・腹の筋力アップ」。背の高さに合わせて、バーにぶら下がります。向かい合わせで二人同時に利用できます。ご夫婦でご一緒にどうぞ!
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_1055274.jpg

三番目は「ソロソロ平均台」。「バランスをとりながら歩く運動です。手すりがついていますので、安心して運動ができますが、なるべく手すりにつかまらずに歩いてみましょう」。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_10122551.jpg

最後が「ユッタリステップ」。「ステップを昇り降りしてみましょう。膝の曲げのばし運動が行えます。何度も往復したり、上段での足踏みは土踏まずを刺激し、より効果的です」。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_10171419.jpg

交通アクセス

所在地 :八王子市中野山王3-12
アクセス:西東京バス「【暁21】中野団地行き」遺跡公園バス停下車
駐車場:ありません
公開時間 :午前9時~午後4時
非公開日 :月曜日・年末年始
ただし、月曜日が祝日のときは公開。(その場合は翌日の火曜日がお休みとなります)
申し込み :当日、管理事務所に手続きしてください。 (団体の場合は事前申し込み)

-----------------------------------------------------------------------------------------------

公園の東側にある都営中野町アパートは、1階部分が商店街になっています。懐かしい駄菓子を売っていたのは神戸屋さん。ご店主の許可をいただいて店内を撮影しました。ココアシガレット30円、ミルクポーロ20円。ひらがなで書いてあるのは、小さな子でも読めるようにとの心配りでしょう。おこづかいを握りしめて駄菓子屋さんに通った子ども時代を思いだしました。
八王子の公園/中田遺跡公園(後編)_b0123486_13171562.jpg

-----------------------------------------------------------------------------------------------
取材協力:八王子市郷土資料館、神戸屋さん

中田遺跡公園(全2話)
→第7話(前編):中田遺跡公園「中田遺跡の発掘調査記録」
→第7話(後編):中田遺跡公園「古墳時代後期の竪穴住居を復元」(当記事)

→八王子の公園|記事一覧

ブログランキング・にほんブログ村へ

by u-t-r | 2013-10-22 16:00 | 八王子の公園

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「現地で直接お話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


by UTR不動産
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31