八王子見て歩記/小池ガラス店(前編)

八王子で50年、街のガラス屋さん
小池ガラス店(前編)
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窓ガラスが割れると大変です。雨風は入ってくるし、第一、防犯上も家を空けるわけにいかなくなります。入居者様からいただくお電話で慌てるのが「窓ガラスが割れちゃった」というもの。急いで修理の手配をしますが、こんな時の心強い味方が、街のガラス屋さん。当社がお世話になっているのは、中野上町の小池ガラス店様です。マンションの窓ガラスから、オフィスビルの大きな玄関ガラス、駐車場の鏡まで何でも直していただけるのがありがたい。ところで、ガラス屋さんってどんなお仕事?ちょっとお聞きしてきました。

新築の家と鏡

かつて、家を新築すると完成後に大工さんが鏡を贈ってくれる習慣がありました。昭和の中頃までだったでしょうか。今ではすっかり見かけなくなりましたね。取り付ける場所は、居間、玄関の姿見、洗面所など色々でしたが、鏡の下には必ずガラス店の連絡先が書いてあったものです。下の写真は、昭和31年築の住宅の洋服ダンスにあった鏡です。「贈 小池硝子店」とありますね。これは先代が手がけた仕事です。
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同じ家の窓です。木製サッシが懐かしい。当時窓ガラスとしてよく使われていたのがフロートガラスでした。フロートガラスとは、溶けた錫(スズ)の上に融解したガラス素地を浮かべて板ガラスを作る製法です。今はかなり丈夫になりましたが、いかんせん当時のガラスは割れやすかった。公園で野球をしている子どもたちのボールが当たっただけでガチャン!今では考えられないもろさです。窓ガラスが割れて、さてどうしよう。ここで鏡に入ったガラス屋さんの連絡先が活きてくるわけです。

お電話いただいたら大きめのガラスを積んでいって現場でカットする。フロートガラスは現場施工ができる便利なガラスでした。そのころの窓ガラスは1枚あたりが小さく、1枚単位で修理が可能な便利なもの。修理費用は40年前で1枚1,000円くらいでしたっけ。少年のおこずかいで弁償できる金額だったんですよ。もっとも、本当にお金をとる大人は少なく、説教で済ませるのがほとんどでした。街の子どもをみんなで見守って育てる時代だったんでしょうね。
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暁町で創業

当社の創業は今から40年前(昭和48年ころ)で、創業の地は暁町でした。先々代がはじめた頃は「馬」付きの自転車にガラスを載せて街を走りまわっていたものです。「馬」とはガラスを載せる台を△に組み合わせた運搬用支持台です。木製サッシ時代の窓ガラスは小さかったので、自転車でも十分運べましたね。お豆腐屋さん、竹ざお屋さん、炭屋さん、紙芝居屋さん、自転車でご商売される方は多かったです。

今は車ですね。窓が大きくなるにつれて、窓ガラスも大きく重いものになりました。すっかり丈夫になってあまり割れないものの、修理を急ぐのは今も昔も変わりありません。現場でカットできない製品もでてきました。機能性ガラスというんですが、合わせガラスの中に飛散防止フィルムが挟んであったり、遮熱性を高めるため真空になっていたり。現場施工できないので、工場出荷段階で所定のサイズに切ってもらっています。
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八王子ならではの現象

八王子は盆地形気候で寒暖の差が大きい場所です。いわば、ガラスにとっては厳しい環境。特にワイヤー(鉄線)入りタイプのガラスでは、冬に自然に割れてしまうことがあります。これは、夜ガラスが冷やされ、朝になって日差しが当たり急に温められるなど寒暖の差の激しい場所によく起きる現象です。原因はガラスとワイヤーの熱膨張率の差。急激な温度差によって膨張したワイヤーにガラスがついていけず、ヒビが入ってしまうんです。
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ここ最近は、2011年の計画停電の経験や、電気料金値上げによる節電意識の高まりで、遮熱性ガラスのお問合せが増えています。冬になるといくら暖房を強くしても冷え冷えする、窓ガラスやサッシが結露する。窓からの外気の影響は非常に大きく、窓は建物で熱の出入りが一番多い場所だといわれています。機能性ガラスや二重サッシに変更することで、熱の出入りを防げれば暖房効率が良くなり、結露を防止することもできるんですよ。

(後編に続く)

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昭和時代、縁日の屋台でよく売っていたのがガラス切りでした。香具師さんの手にかかると、まるで魔法のようにガラスがスパスパ。切り傷を入れて軽く叩くと、円形だろうがギザギザだろうが、見事にガラスが切れました。ところが買って帰って自分でやると、どうにも切れない。切り方にコツがあるのか、そもそもガラス切り自体に問題があるのか。世の中の厳しさを子ども心に知る経験でもありました。

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取材協力:小池ガラス店(八王子市中野上町4丁目23番地2号)

→「前編:八王子で50年、街のガラス屋さん」(当記事)
→「後編:機能性ガラスってなに?」

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by u-t-r | 2013-08-13 16:00 | 八王子見て歩記

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「現地で直接お話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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