つぶやき/江戸の暮らし-3

バーチャル・長屋で一人暮らし
江戸の暮らし(第3話)
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江戸時代の実物の古銭がないものかと、オーナー様にお聞きしてみました。「あったよ」とお電話いただき、お借りしたのは万延大判、二朱金、天保通宝(百文銭)、寛永通宝(一文銭)の4種類。万延大判は、通貨であった小判に対して恩賞・贈答用として用いられておりました。大判は1枚で万延小判25両もの価値があり、おそらく庶民は一生見ることがなかったでしょう。

江戸時代の貨幣にはおのおの体系の異なる金・銀・銭の三貨がありました。金には両、分、朱、疋(ひき)があり、一両=4分、一分=4朱、一分=金100疋。銀は貫、匁(め)と表示しました。銭の基本単位は文で、一文銭、四文銭、十文銭、百文銭などが造られていて、1000文で一貫文。金・銀・銭の換算は寛永通宝4,000文=銀六十匁=一両です。

さて、江戸時代の通貨を現在の貨幣価値に換算しながら、長屋の一人暮らしをご紹介しましょう。

裏長屋へようこそ!

内見でご案内するのは表通りから1歩入ったワンルームマンション=長屋です。お家賃は1万円/月。大変お得な敷金・礼金ゼロ物件です。長屋の入口は防犯のため木戸が付いていて、夜間は閉じることになっています。オートロックならぬ、マニュアルロックでセキュリティ。各戸のドアにはお住まいの方の名入れサービス付き。ご商売される方には宣伝代わりに商品名を大きくお入れいたします。
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玄関

引き違い戸を開けていただくと玄関です。下駄箱はありません。
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キッチン

玄関入って右側がキッチンになります。火力の強い薪専用コンロでご飯がふっくら炊けるのが自慢です。1回の煮炊きで薪代が800〜1,000円ほどかかるので、なるべく節約された方がいいでしょうね。申し遅れましたが当物件は、ガス・水道・電気なしですので、飲料水は共同井戸から水瓶に汲みおいてくださるようお願いいたします。幸いなことに昨年の計画停電でも影響は全くありませんでした。
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換気扇がありませんので、調理の際はこちらの換気口を開けていただきます。夏場の蒸し暑い夜も風が通り抜けるので比較的涼しく過ごせるかと存じます。
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キッチン収納はコンロ上に2段の棚です。食器や調味料などを置くのにお使いください。なお、無電化住宅のため冷蔵庫は使えませんので、バターや冷凍食品などの買い置きは避けるようご注意をお願いします。
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居室は四畳半一間の総フローリング張りとなっております。当物件に畳は付いておりませんので、必要な方はご入居の際にご用意をお願いいたします。健康のため、イグサ製フロアマットを敷く方もいらっしゃいます。
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また、お部屋を極力広くお使いいただけるよう収納スペースも省略させていただきました。釘打ちは自由ですので、必要な場所に収納棚を吊ることも可能です。
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布団は1枚220万円もする高価な買い物です。パーテーションでおしゃれに隠してみてはいかがでしょう。
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洗濯場

共同井戸は長屋のはずれにあります。洗濯や野菜洗いはこちらをご利用くださいませ。井戸水使用料は無料ですが、毎年7月7日は江戸市中で一斉に井戸さらいを行いますので、ご協力をお願いいたします。
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ベランダの外側が共同物干し場になっています。干す場所が限られておりますので、皆さんと譲り合ってご使用ください。
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トイレ

長屋の端に共同トイレがあります。入居者様全員で使うので、清潔を心がけましょう。なお、屎尿の売上げは管理会社のものとさせていただきます。隣はゴミ捨て場です。分別しないで出せるので大変ご好評です。
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お買い物

長屋から表通りに出ると、すぐお米屋さんと八百屋さんがあり、毎日の買い物に大変便利な立地です。消費税がかからないお買い得な商店街となっております。食事時間前になりますと、魚や豆腐などの行商も来ますので、お買い物に不便はないはずです。写真は搗きたてのお米で好評の上総屋さん。
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産地直送の新鮮お野菜と自家製漬け物は八百新さん。
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飲食店

長屋のすぐ近くに喫茶店があります。お待ち合わせにご利用ください。席料64円のほか、メニューは甘酒1杯132円、串ダンゴ1本66円、トコロテン1杯1,155円です。
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たまには美味しい料理を食べたい。そんな方にお薦めなのが船宿「舛田屋」さんと「相模屋」さん。江戸前の海鮮料理が自慢のお店です。鬼平犯科帳に登場する料理を再現された居酒屋さんによると、こんなメニューだったそう。
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忙しい方には移動式ファーストフード店も何か所かありますよ。稲荷鮨1個150円、寿司は今の2倍ほどの大きさ。2つに切って出したことから1貫=2個セットになり、今に伝わります。揚げたて天ぷらは1串80円、日本蕎麦264円。一人分のご飯を炊くより、外食の方がお安いかもしれませんね。
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交通機関

当エリアには公共交通機関、電車やモノレール、バス、タクシーなどはございませんので、移動は原則徒歩になります。渡し船の運賃は川幅によって66円〜264円。お急ぎの方は猪旡舟(ちょきぶね)をご利用ください。3.3kmで3,700円です。
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いかがだったでしょう。電気代・ガス代・上下水道代ゼロ。究極の省エネ住宅、長屋の住まい心地をご紹介してみました。江戸時代はほんの144年ほど前。こういうお部屋で庶民が家族仲良く暮らしていたんです。

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さて、この裏長屋。もし現代にあったらお家賃おいくらくらいになるでしょう。表通りが繁華街、その裏手にあるのが長屋です。八王子でいえばJR八王子駅の北口ですね。当社はJR八王子駅すぐ近くの旭町にありますが、20m2のワンルームマンションだと6万円くらい。もし長屋があったら、あったら…。う〜ん。やはりお家賃は1万円くらいでしょうねぇ。
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取材協力:深川江戸資料館

江戸の暮らし(全3話)
→第1話「長屋は江戸時代のワンルーム」
→第2話「江戸庶民の家計簿」
→第3話「バーチャル・長屋で一人暮らし」(当記事)

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by u-t-r | 2012-12-11 15:58 | つぶやき

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「現地で直接お話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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