八王子見て歩記/三味線工場-2
2013年 02月 05日
三味線の種類と構造
八王子の三味線工場(第2話)
机の上に重ねられているのは おせちのお重じゃありません。皮を貼る前の三味線の胴です。後ろに見えるのは棹。三味線のルーツは永禄年間(1558〜1570年)、泉州堺の商人が琉球から持ち帰った蛇味線を元に琵琶の奏者や職人により改良され作られたと言われています。第2話では出荷直前の保管室で三味線の種類と構造を拝見します。何ひとつ分からない私に、社長が色々教えてくださいました。
棹は三分割
一言で三味線といっても、胴の大きさだけでも長唄、津軽、小唄、民謡、地唄があり、棹は長さは一緒ですが、太さに違いがあるのです。大きく分けて、細棹、中棹、太棹。長唄は細棹、地歌は中棹、津軽は太棹と決まっています。一見、なめらかな木肌で1本に見えますが…。
棹は上棹、中棹、下棹の三分割構造になっています。継ぎ手部分はホゾになっていて、組み立てればぴったりと合わさり、繋ぎ目がどこだか分らなくなります。
持ち運びに便利なこともありますが、部分的に修理ができることや、何より、棹の反りやねじれを抑えることがねらいです。
1階の保管室には和箪笥が何竿も並んでいます。それぞれに「津軽」や「地唄」のステッカーが貼ってありました。三味線の棹を種類別に収納しているんです。
棹は和箪笥にちょうど入る長さです。
胴の大きさは演目ごと
三味線の胴は、堅く強い材質で皮が強く張れるタイ産の花梨(かりん)や、堅くて狂いが少ない樹木、紅木(こうき)で作られます。紅木は東南アジアや中国雲南省にしかない高級銘木で、自生する紅木資源の減少が著しく、ワシントン条約(CITES)付属書2類に指定され、国際取引に規制があるほか、インド国内法等でも取引が厳しく規制されています。現在、中央政府の許可を得て、年間1〜2トン入荷します。他にも紫檀(したん)、花梨(かりん)があり、稽古用の三味線もあります。
高級品は反響効果が増すように胴の内部を綾杉(あやすぎ)彫りを施してあり、綾杉胴と呼ばれます。コンサートホールでも、音が拡散し残響が長くなるようにギザギザの形になっていますが、あれと同じ原理ですね。
胴は事務用ロッカーに重ねて収納。もちろん、種類別になっています。
皮張りは三味線屋さん
最後に皮張りについて教えていただきました。こちらの工場で作るのは胴や棹の製造までで、皮を張るのは三味線屋さんの仕事だそうです。三味線といえば猫の皮のイメージですが、それは高級品の話し。普通は犬の皮か、合成皮革を用いています。皮と胴の接着には餅米の粉を使い、ピンと張るといい音が出るものの破れやすくなる。破れない範囲で強く張るのが勘所。費用は、並・中・上・特上に別れ、5,000円〜5万円までピンキリです。
作業台の上には、全国各地の三味線屋さんから届いた注文に沿った製品が並んでいました。「堅めの胴でお願いします」「お客様が3人揃って使うので、同じ木目で3本」。演奏する方のお好みによってさまざまな特注が来るそうです。
-----------------------------------------------------------------------------------------------
工場には皮を張った完成状態の三味線はないそう。街の三味線屋さんと工場で守備範囲を分担して、製造〜お手入れ〜修理を手がけているのが和楽器業界。「紺屋の白袴です」と社長さん。
-----------------------------------------------------------------------------------------------
取材協力:株式会社 東京和楽器
八王子の三味線工場(3話)
→八王子の三味線工場(第1話)「かつては花嫁修業の定番」
→八王子の三味線工場(第2話)「三味線の種類と構造」(当記事)
→八王子の三味線工場(第3話)「工場見学」
八王子の三味線工場(第2話)
机の上に重ねられているのは おせちのお重じゃありません。皮を貼る前の三味線の胴です。後ろに見えるのは棹。三味線のルーツは永禄年間(1558〜1570年)、泉州堺の商人が琉球から持ち帰った蛇味線を元に琵琶の奏者や職人により改良され作られたと言われています。第2話では出荷直前の保管室で三味線の種類と構造を拝見します。何ひとつ分からない私に、社長が色々教えてくださいました。
棹は三分割
一言で三味線といっても、胴の大きさだけでも長唄、津軽、小唄、民謡、地唄があり、棹は長さは一緒ですが、太さに違いがあるのです。大きく分けて、細棹、中棹、太棹。長唄は細棹、地歌は中棹、津軽は太棹と決まっています。一見、なめらかな木肌で1本に見えますが…。
棹は上棹、中棹、下棹の三分割構造になっています。継ぎ手部分はホゾになっていて、組み立てればぴったりと合わさり、繋ぎ目がどこだか分らなくなります。
持ち運びに便利なこともありますが、部分的に修理ができることや、何より、棹の反りやねじれを抑えることがねらいです。
1階の保管室には和箪笥が何竿も並んでいます。それぞれに「津軽」や「地唄」のステッカーが貼ってありました。三味線の棹を種類別に収納しているんです。
棹は和箪笥にちょうど入る長さです。
胴の大きさは演目ごと
三味線の胴は、堅く強い材質で皮が強く張れるタイ産の花梨(かりん)や、堅くて狂いが少ない樹木、紅木(こうき)で作られます。紅木は東南アジアや中国雲南省にしかない高級銘木で、自生する紅木資源の減少が著しく、ワシントン条約(CITES)付属書2類に指定され、国際取引に規制があるほか、インド国内法等でも取引が厳しく規制されています。現在、中央政府の許可を得て、年間1〜2トン入荷します。他にも紫檀(したん)、花梨(かりん)があり、稽古用の三味線もあります。
高級品は反響効果が増すように胴の内部を綾杉(あやすぎ)彫りを施してあり、綾杉胴と呼ばれます。コンサートホールでも、音が拡散し残響が長くなるようにギザギザの形になっていますが、あれと同じ原理ですね。
胴は事務用ロッカーに重ねて収納。もちろん、種類別になっています。
皮張りは三味線屋さん
最後に皮張りについて教えていただきました。こちらの工場で作るのは胴や棹の製造までで、皮を張るのは三味線屋さんの仕事だそうです。三味線といえば猫の皮のイメージですが、それは高級品の話し。普通は犬の皮か、合成皮革を用いています。皮と胴の接着には餅米の粉を使い、ピンと張るといい音が出るものの破れやすくなる。破れない範囲で強く張るのが勘所。費用は、並・中・上・特上に別れ、5,000円〜5万円までピンキリです。
作業台の上には、全国各地の三味線屋さんから届いた注文に沿った製品が並んでいました。「堅めの胴でお願いします」「お客様が3人揃って使うので、同じ木目で3本」。演奏する方のお好みによってさまざまな特注が来るそうです。
-----------------------------------------------------------------------------------------------
工場には皮を張った完成状態の三味線はないそう。街の三味線屋さんと工場で守備範囲を分担して、製造〜お手入れ〜修理を手がけているのが和楽器業界。「紺屋の白袴です」と社長さん。
-----------------------------------------------------------------------------------------------
取材協力:株式会社 東京和楽器
八王子の三味線工場(3話)
→八王子の三味線工場(第1話)「かつては花嫁修業の定番」
→八王子の三味線工場(第2話)「三味線の種類と構造」(当記事)
→八王子の三味線工場(第3話)「工場見学」
by u-t-r
| 2013-02-05 16:00
| 八王子見て歩記