八王子見て歩記/高尾山薬王院(後編)

天狗の住むお寺(後編)
高尾山薬王院/四天王門〜御本社
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薬王院境内のあちこちに天狗像があります。大本堂仁王門の表側にはふだん見慣れている阿吽の仁王像2体、「阿(あ)」 は口を開いて発する音声で字音の初め、「吽(うん)」 は口を閉じた時の音声で字音の終り、万物の初めと終りを象徴しています。薬王院だけは裏側に大天狗と小天狗の像があるのが特徴です。

境内はこのようになっています。(クリックで拡大)
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四天王門〜仁王門〜御本堂
大杉原と杉並木を抜けると、どっしりとした構えの重厚な四天王門が現れます。江戸時代に建立された山門と同様の形式で昭和59年に再建されました。門内には、持国天、増長天、広目天、多聞天の四天王像が安置されています。それぞれのお顔の色が違うのは、四季にあてて、春=青、夏=赤、秋=白、冬=黒に配しているからです。
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四天王門をくぐった右に大天狗像と小天狗像、平成17年(2005年)に建てられました。
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御護摩受付所から階段を上がって、大本堂に参拝します。高尾山中にある薬王院は、一番奥の御本社にたどり着くまで坂や階段が多いお寺なんです。
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大本堂前にある紅殻彩色の門が仁王門です。江戸中期の建立で、東京都有形文化財に指定されています。昭和34年(1959年)と昭和41年(1966年)の2回も台風で倒壊し、そのたびに解体再建されてきました。こちらは左側の小天狗。
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大本堂は薬王院の中心となる建物で、飯縄権現(いづなごんげん)を祀る社殿があります。明治34年(1901年)建立。堂内には護摩壇が設けられています。
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大本堂の横にある鐘楼。お焚き上げの時間になると鐘で知らせてくれます。
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大本坊(客殿・書院・方丈院・有喜閣)
大本坊は、客殿、書院、方丈殿などの建物を含めた総称で、貫首、僧侶の執務室や、修行者などの修行・宿泊施設です。(クリックで拡大)
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御本堂の下、横の道を行くと大本坊です。大きな杉に抱かれるようにして建つ黒門は僧侶専用で、一般の方は通行できません。門の向かって左の道から入ります。
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御護摩受付所の休憩室に古い観光ハガキが展示されていました。こちらは明治末期の大本坊と黒門です。解説には「明治末期の大本坊玄関付近の姿を伝える貴重な写真。庫裏・大玄関・書院と立ち並び隆盛を極めたが、昭和四年の大火で全焼。現在の姿に完成したのは、昭和46年になってからである。」とありました。黒門前の杉の大木はそのままです。
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大本坊入って正面の大きな建物は客殿です。宿泊と研修をするための建物で、絵画展示や演奏会などの催しはここで行われます。最近ではヨガ教室に使われることもあるとか。なるほど、高尾山の大自然に包まれてもってこいかもしれませんね。
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ひときわ目を引く重厚な建物は書院です。すべて高尾山で育った600年杉を使用した総杉造りで、釘を一切使わず、柱も切られる前の方位を守って取り付けられているなど、目に見えない部分へもこだわっています。要人との応対時などに使われているので、現在、一般公開は行われていません。
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精進料理をいただけるのは、こちらの方丈殿。シーズン中は予約しておく方が安心です。
季節の精進料理のメニュー(高尾膳と天狗膳)をHPでご覧になれます。
→大本山高尾山薬王院の精進料理
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御本社(飯綱権現堂)
大本堂の横から階段を上がったところが御本社(飯綱権現堂)です。まだまだ階段は続きます。欄干には江戸火消の組名が数多く刻まれていました。
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御本社は飯縄権現を祀る社殿で、大本堂とよく似た造り。カラフルな彩色が施されているこちらは神社になります。薬王院は神仏習合のお寺なので、大本堂(仏式)と、朱の鳥居のある御社(神式)がある極めて日本的なお寺です。朱塗りの入母屋権現造りの建物は、江戸時代の享保14年(1729年)の建立という由緒ある社殿建築物で、有形文化財指定を受けています。
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御本社の前に大天狗と小天狗像。銅張りの御賽銭箱には、江戸時代の火消し組の纏(まとい)の文様が施されていました。欄干の組名といい、江戸火消との縁を感じさせます。
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帰路〜参道を抜けて
お参りが終わった後は、大杉原の大きな杉を眺めながら、エコーリフト「山上駅」へと向かいます。途中、何本も杉が折れたり倒れたりしていました。こんなに太い幹がへし折れてしまうんです。台風の強風と土砂崩れで、一部不通になった道もありました。
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山上駅に到着。ケーブルカー「高尾山駅」より少し下ったところにあります。
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薬王院の四季
薬王院様に高尾山の季節ごとの見どころを教えていただきました。
これからの季節なら11月下旬から12月初旬にかけての紅葉です。もみじ狩りの主役イロハモミジ、他にもカジカエデ、イヌブナ、イタヤカエデ、シラキなどがケーブルカー周辺や薬王院の境内で見られるそう。
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そして冬。すっぽり雪に包まれた静かな大本坊の姿です。雪景色はお寺によく似合います。
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大晦日には、高尾山の山頂から富士山の頂上直下に沈む夕陽を観ることができます。元旦の午前零時から一番護摩(特別開帳大護摩供)がおこなわれ、この日だけは夕方4時ころまで約1時間ごとに1回、合計13回のお護摩が焚かれます。初日の出が上がってくると迎光祭です。
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毎年3月の第二日曜日には、ふもとの京王高尾線「高尾山口駅」近くの自動車祈祷殿広場にて火渡り祭が行われます。燃え盛る焔と勇壮な儀式が圧巻の高尾山修験道の一大イベントです。一般の方も修験者に続き火を渡ることができます。
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新緑の5月は、全山が明るい若葉に覆われて、1年で一番爽やかな景色を見ることができます。お勤めの方にお聞きしたら、「個人的に一番好きな季節です」とのこと。
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観光シーズンになると高尾山は大変な混雑になります。昨年秋には1日に7万人もの観光客が来山して、すべての道で自分の足もとすら見えない状態になりました。こうなると、立ちくらみ・貧血で倒れる方や、登山ルートで転んでケガをする方が続出します。多い時は1日で10人にも達したそうです。具合の悪くなった方を収容して、麓に降ろせるのは薬王院様だけ。事務室の壁には東京消防庁の感謝状がかかっていました。

「高尾山は観光地として有名になりました。麓からケーブルカーやリフトを利用できますし、参道が舗装されているので、登りやすいお山かもしれません。でもやはり登山は登山なんです。ハイヒールやサンダル履き、特にお年を召した方が無理して登られると事故のもとです。どうぞお気をつけください」とのことでした。

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→前編「高尾山薬王院/高尾山口駅〜大杉原」に戻る

取材協力:大本山高尾山薬王院

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by u-t-r | 2011-11-15 15:55 | 八王子見て歩記

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「現地で直接お話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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