賃貸管理日記/消火器

消火器って何だろう?
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マンションの廊下にひっそりと置かれた赤い消火器。
よく見かけるものの、実際に使ったことがある方は少ないでしょう。
消火器について、株式会社ミナカミ様に取材させていただきました。

初期消火の大切さ
平成7年(1995年)1月17日に発生した阪神・淡路大震災。大都市を直撃した都市型震災であったため、住宅の全焼6,148棟、全焼損(非住家・住家共)合計7,483棟という大きな火災被害が起きました。消防庁では、平成9年度に「地震時における出火防止対策のあり方に関する検討委員会」を設けて同震災の検討結果をとりまとめ、「初期消火の重要性」については次のように報告されています。

火災285件のうち、146件では初期消火が行われています。そのうち、火災の鎮火に対して有効だったものが58件(初期消火の行われたものの約4割)を占めています。
消火に用いられたものは「消火器」が81件でもっとも多く、次いで「水道・浴槽の水・汲み置き」が29件で、初期消火率は34.5%となっています。
このことから、地震時に火災に対する初期消火の重要性と、火災規模が小さい段階であれば消火器でも大いに効果を発揮することがわかります。
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最近、消防機関で調査したデータ(火災事例に学ぶ/平成15年版)によると、火災を発見して素早く消火器を使って初期消火をした場合、大事にいたらず消火に成功したケースが75.3%にものぼります。これだけ初期消火に効果的な消火器。では、実際の使用率はというと…。
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平成15年版「消防白書」によれば、22.5%に過ぎません。消火器を使った初期消火の成功率75.3%に比べあまりに少なすぎる数字です。何も使わなかったケースが37.9%もあります。
※「平成20年版消防白書」はこちら
消火器の使用率は、第1章 災害の現況と課題→第1節 火災予防→[火災の現況と最近の動向]→1 出火状況→ 「(5)火災の覚知は119番通報、初期消火は消火器」でご覧になれます。

消火器の種類
消火器に書いてあるA・B・C、3つのアルファベットの意味は、火災の種類を表しています。
消防法では、対応する火災によって次の3種類を表示しています。
・A火災(普通火災)用:紙、木、繊維、樹脂など主として固形物が燃える一般的火災に適応。
・B火災(油火災)用:油、ガソリンによる火災に適応。
・C火災(電気火災)用:電気設備の火災に使用可能。

消火器側面に表示されている3種類の円型マークで、適応する火災がわかるようになっています。
・A火災 - 白地に黒文字
・B火災 - 黄色地に黒文字
・C火災 - 青地に白文字

消火器に入っている消化剤は大きく分けて3種類です。
・粉末系消火器:粉末状の消化剤を粉霧するタイプ、即効性がある。
・水系消火器:消化液や泡を放出するタイプ、放射距離が長い。
・ガス系消火器:二酸化炭素を粉霧するタイプ。
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消火器の設置
消火器を設置しなければならない建物については、消防関係法令で細かく決められています。一般的なマンションもそうです。延面積150m2以上の寄宿舎、下宿または共同住宅等では、「消火器の配置は、各対象部分からそれぞれの消火器に至る歩行距離が20m以下ごととし、各階ごとに設置すること」(消防法施行規則6-6項)というように細かく基準が設けられています。廊下や通路の壁など、建物のあちこちに設置されているのはそういう理由からです。

設置のしかたも「床面より1.5m以下の高さに設置すること」(消防法施行規則9-1項)、「消火器具を設置した場合には、消火器にあっては『消火器』と表示した標識を見やすい位置につけること」(消防法施行規則9-4項)と、実にきめ細かい。

消火器の点検
消火器は、内部に充填された消火薬剤を圧力によって放射する圧力容器になっています。このため、約1.0〜1.5MPa(10〜15kgf/cm2)という、プロパンガスボンベ(約0.8MPa)より高い圧力がかかっており、本体容器に腐食が起きると大変危険です。
それぞれの消火器に明示してある「耐用年数」を過ぎたら、速やかに新しい消火器と取り替えてください。また、高温、多湿、腐食性ガスや潮風のあたるところでは「耐用年数」まで耐えられないこともありますので、格納箱に入れるなどの保護対策をして、さらに維持管理にもご注意ください。

消火器の点検も法律で義務付けられています。マンションの場合ですと、延面積1000m2以上の場合で3年に1回。法定資格者(消防設備士・消防設備点検資格者)による定期的な点検を受け、異常のあるものを適切に整備する必要があります。点検を行った結果を「維持台帳」に記録するとともに、期間ごとに消防長または消防署長に報告しなければなりません。
規定による点検報告をせず、または虚偽の報告をした者は、30万円以下の罰金または拘留に処せられます。恐ろしい!
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ついつい職業意識が…

防災設備屋さんの日常ってどんなでしょう。
日頃どんな防災意識が働いてしまうのか、ミナカミ様に聞いてみました。

●「新年会や忘年会を開く時は、管理契約してるお店に決めています。だって、どこに消火器があって、避難経路がどこかをちゃんと把握できるんですもの」。
●「地下のお店や、店内が迷路のような複雑なつくりのお店は躊躇しちゃいますね。はしご車が届くのは10階までですから、それ以上の階のお店にも入りませんねぇ。これ、基本だと思いますよ」。
●「マンションを借りる時は現地チェックをします。ポイント?ベランダの避難口の位置!それに消火器のラベルを見て定期点検してるかどうかを確認!」。
●「高校生の子どもにも、ついついうるさく言ってしまうんですよ。普通の子と同じ場所から逃げるな!人が殺到してよけい危ない。職員出口やオリローなら空いてるから安全に逃げられる。第二の出口の確認が大切…(ぐだぐだ)『お父さんっ!いつもいつも避難の話しばっか!いいかげんにしてよ!』と最近聞いてくれなくなってねぇ…」。
●「社員旅行に行くでしょ。自然に皆で手分けして避難経路をチェックしちゃうんだな。『消火器よーし!』『消火器の使用期限確認っ!』『避難口よーし!』大の大人が指差し点検。

どうしてですか?と聞く私に一言。
「だって、防災屋が火事にあったらしゃれにならんだろ?」
「ましてや逃げそこなっただなんて、プロとしての沽券にも関わりますっ!」
「はたから見たら消防マニアに見えるかもしれんが…」
なるほど。
ところで、写真は応接ルームに置いてあった置き物です。
えっと…、消防車ですよね?これ。
消防マニ……、いや、なんでもありません。
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取材協力:株式会社ミナカミ

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by u-t-r | 2009-06-02 17:15 | 賃貸管理日記(一般)

UTR不動産です。八王子の歴史や暮らしをコツコツ取材しています。基本は「現地で直接お話しを聞く!」。地元の話題が多いですが、どうぞお付き合いのほどを。


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